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回廊の侵食〜ボルさんぽ〜

 学園の上空に立つ。回廊産の雑魚共が暴れまわっているのが見える。
 隣で浮遊するクローバーは、腹についた大きな目玉を細め、仲間達を見下ろしていた。上についている、睨んでいるような二つの目が、ちらちらと学園の廊下へ注がれているのが分かった。
 猫がいる。
 廊下に猫がいた。
 いや、猫の帽子を被った少女だ。
 スペードやダイヤに囲まれた少女は、器用に雑魚共の攻撃をかわしているが、雑魚の数は多い。そのうち捕らえられてしまうだろうと、クローバーの目が訴える。

「何何ー?遊びたいなら順番守ってよぉ!」
 来栖藍はトランプ兵から素早く逃げ回っていた。捕まえようとしても捕まらない少女に、雑魚共が苛立っているのが分かる。
 スペードが叫んだ。
 藍が身をよじって避けた。
 紫色の叫びはダイヤに当たる。叫びの効果でダイヤは怒りを抑えなくなる。物凄い速度で突っ込んでくるダイヤたち。
 集団で藍に襲い掛かり、捕縛しようと飛びついた。
「うにゃぁっ!」
 直後。
 青白い光に貫かれ、破片に姿を変えていった。
 光に遅れて、ごろ…と、唸るような音が続く。
「この子供からは手を引け」
 藍の頭の上から、低い声が聞こえた。
 雑魚がたじろぐのを見た来栖藍は、自分もと上を見る。そして、にぱっと、人懐こい笑みを浮かべるのだった。
「あっ!校庭に落ちてた人だね!」
「……その言い方をやめろ」
 トランプ兵がフルフェイスのヘルメットを被った男に鋭い視線を向ける。
 仕方のない事である。フォレストの学生を守っている。イコール。裏切りであるのだから。
 スペードが叫び、ダイヤやクローバーが一斉に襲い掛かってくるのを、来栖藍を抱き上げた男は冷ややかに見つめた。

「従属科の連中には借りがあるんでな」

 廊下が一際眩しく光り、雑魚の姿が消えうせる。
 その場から離れ、ボルトは藍を床に下ろした。
「行け。外に面した場所より、学園の内側に通っている廊下の方が、一応は安全なはずだ」
 彼女に背を向け、ボルトは呟く。
「助けてくれたの?有り難うっ!落ちてた人!」
 来栖藍は愛らしく笑った。
「ふん……勘違いするな。従属科への借りを返しているだけだ。それから」
「それから?」

「落ちていた人と、呼ぶな」

 常時不機嫌そうな男の声が、珍しく困っていた。
 
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