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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -
〜1.5〜

 国原文は放電を苦手とする。弟の十六夜ジャックに雷を放つ事全般を任せている姉は、代わりに電気をためて身に纏う事を得意としていた。
 自分自身を電磁石のように扱い、アルミ缶とスチール缶を分別していく。くっついたらスチール。そのまま青いバケツの中へ入れていく。くっつかなかったらアルミ。後でまとめて別のゴミ箱に入れる。
 捨てられた物が散乱しているゴミ捨て場を整理して、収集する側の苦労を減らそうとしているのだった。
 国原流、お気遣いである。
 そんな国原を見て、声をあげる者がいた。

「わ! 何だあれ! 七不思議のどれ!?」

 手帳を手に持った青年がページと国原を交互に見ながら言う。制服を見れば普通科の生徒だと分かった。しかし普通科は特殊能力科とは別の棟にあるクラスの筈である。どうして彼らが此処にいるのか。
 不思議そうに青年たちを見つめていると、残りの男子生徒たちも口々に電気を纏う女子生徒を指差して声を上げ始めた。
「新種じゃね!? 磁石女!」
 新種……という事は、学園の七不思議を追って肝試しでもしているのだろうか。
「つうか何今の? 怖くねぇ!?」
「妖人科って所じゃないか? 化け物がいる教室なんだろ?」
 非日常的な物、特殊な物に拒否反応を示す者がいるのは仕方がない。其処は諦めていた国原と十六夜だが、最後の一言は流石に頭に来た。
 何も知らない癖に。と内心で毒づくと、直後に十六夜が喚いた。
(俺を外に出せ! あいつら焼き焦がす!!)
「(駄目だよ学! そんな事したら危ないよ!)」
 肝試しにこんな場所まで足を運んだ男子たちに危害を加えようと息巻く十六夜を制止する文は、きっと普通科の生徒たちを睨んだ。
 つかつかと歩み寄ると、生徒たちは後ずさりながら、こえぇ、なんか近寄ってくるんだけど、とか何とか言っている。
「ねぇ!」
 不満げに口を開いたその時。
「悪霊退散!」
 手帳を持っていた男子生徒が、石を投げてきた。



(文! 良いから俺を出せって! 交代だ交代! こいつらぶっ殺してやる!)
 怒り狂っている弟が中で叫ぶのを聞きながら、文は幼い頃を思い出していた。こうして石を投げられ、蹲り、ただ暴力が終わるのをじっと待っているしか出来なかったあの頃。
 化け物だ疫病神だと蔑まれていたあの頃。
 痛い、苦しい、寂しい、悲しい。人間なんか嫌い。そうやって涙を流していた、小さな頃。
 今でもこんな目に遭うとは思わなかったが、学園は広いのだからこういった人間もいる。忘れてはいけなかった。
 こめかみに痛みが走る。手で抑えてみれば、赤茶色のとろりとした液体がつく。石ががつがつと当たり、十六夜が怒り、国原が悲しんだ。
「おい、やめろって! あぶな! 落ち着けよ!」
「何してんだって! 血ぃ出てるだろあの子!」
 手帳を持った眼鏡の生徒と、他一名が石を投げている中、残った二人が一生懸命に止めようとしている。ねぇ! と不愉快げに声をかけてきた女子生徒を見て、これは幽霊やら妖怪の類ではなさそうだと判断した青年二名が止めているのだった。
 しかし眼鏡の生徒は止まらない。
 金切り声を上げて悪霊退散悪霊退散と石を投げ続けている。
「死ね! 化け物!」
 眼鏡がずれるのも構わずにそう叫んだ瞬間、凄まじい風が彼らの前から後ろに向かって吹いた。黒い風はそのまま背後で止まる。
 蹲っていた生徒の姿が、無い。
 後ろの正面で、高くて低い声が響いた。



『ヨォヨォ面白ェ事ヤッテンジャネェカ?』
 
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