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〜7〜

「メンバーは五人必要だね」
 ソレイユを抱きかかえながら鏡の世界へと逃げ込んだ芥川は、此処までは追ってこられないのだろう二次創作の故人を一瞥した。
 腕の中にいる小柄な女性をゆっくり着地させ、次元の歪みに翻弄される鏡の住人たちを見ていた。
 元々、あちらで言う現実の世界と鏡の世界は、同等の力でもってつりあう存在となっていた。1:1という奴である。
 しかし今回、魔女の呪いによってその均衡が破られようとしていた。過去が変わる。未来も変わる。時間軸の矛盾を修正しようと周囲の空間を無理やり引っ張り込もうとする力が生じ、やがて次元の境が歪んでしまう。
 そうなれば均衡は保てない。鏡の世界の力が圧倒的に強くなってしまえば最後、現実世界は鏡の世界の圧力に負けて飲み込まれてしまう。
 パラレルだった筈がパラレルでは無くなり、同じ人間が世界に二人存在する事に繋がり、やはり矛盾が生まれ、最後には。
「急ごうか。早くしないと、統合されてしまうからね」

 一つとなった世界で二人いる人間は一人にくっ付けられる。

 人格も記憶も全て無理やり一つの器にぶち込まれ、許容量を超えてしまう。そうすれば後に残るのはキャパシティオーバーによる暴走と消滅のみ。
「黒鏡の嫡子よ」
 考え込んでいた芥川に声がかけられる。
 黒い髪、茶色の目、大きな刀を腰に下げた国原文……に似た誰かが此方へ歩いて近づいてきた。その隣には赤い髪、金色の目、大きな杖を肩に担いでいる十六夜ジャック……のような誰かもいた。
「やぁ、ルブルベスタたち。過去の改竄は進んでいるのかい?」
「うん、そうだな……思っていたよりも早い」
「5%だ。5%の改竄だけでこの様だ! 早急に魔女を叩き潰す必要がある!」
 ソレイユの目の前で行われる唐突で訳の分からない話し合い。
 飄々とした芥川にのんびりとしたルブルベスタ(黒)、そしてイライラした様子のルブルベスタ(赤)。会話についていけない彼女へ悪魔二人の視線が注がれる。

「「で。誰なんだ、この人間」」

「協力者さ」
 掻っ攫ってきた女性をそう即答する芥川に悪魔二人は揃って片方の眉を上げた。
「半ば強制的にか」
「半ば強制的にだろうな」
 
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