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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -
〜4〜

 大きな学園の前にたっているのは、金の長髪をなびかせる長身の女だった。白と黒のこうもりを従えた彼女は学園の平和だとか愛とか友情だとかをぶち壊すつもりだった。
 喧しく飛び回る黒いこうもりと、気だるげに羽ばたく白いこうもり。二匹は魔女が歩き出すとゆっくりついて行った。
 昇降口に入り、白いこうもりに指だけで指示する。白の使い魔は魔方陣から数匹の仲間を呼び出すと学園の外を飛び始めた。白いこうもり、ことミミナガコウモリは諜報担当の使い魔である。
 金髪の魔女が学園の廊下へ足を踏み出した。魔方陣で黒いこうもりを何匹かに増やして自分を守らせる。攻撃担当のカミツキコウモリが忙しなく右へ左へ飛ぶのを視野で捉えながら魔女は進んだ。
 幸福そうな者を目にしたら無差別に襲うつもりなのである。
 この魔女は他人の幸せを何より嫌う。善だの良だのを口にする人間は更に嫌う。
「行くぞ……エルダを不幸にするついでに、姪たちの学友も落としにな」
 非常に愉快極まりないといった笑みでマチルダは呟いた。
 カミツキコウモリたちがキィキィ鳴き声を上げる。
 一人の客人が学園をかき回し、不幸せをばら撒こうと動き出した。


 金髪の魔女を追いかけ、銀髪の魔女とその夫が学園の前に到着したのは暫くたってからであった。
 歴史が変えられてしまう影響か、苦しそうな息遣いで夫にもたれかかる魔女は何とか足を動かし、学園へ入ろうとよろめく体を進ませようとする。
 子供を生んでいなかった事にされる、夫と出会わなかった事にされる、過去を弄られ現在の自分が変化してしまう苦しさを抱えつつ、エルダは子供たちの元へ行こうとしていた。
 自分の過去が変わり現在が変わるのは夫である酒菜も同じこと。具合が悪そうに妻を支え、学園の中へ入っていく。
 干渉音を響かせ、夫の方が空中に出現させたのは二匹の魚だった。赤い体に紫色の斑点を持つもの、そして紫の体に赤い斑点を持つもの。魔女を支え、夫を支えながら尻尾を揺らす魚たちと共にマチルダを追いかける夫婦は、ふらふらと学園内を彷徨い始めるのだった。
「エルダさん、しっかり……私たちが夫婦で、両親でい続ける為に……」
「……分かっておる。分かっておるよ……」
 
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