釘が困った話〜1〜
三人の悪魔が困り果てた様子で廊下を彷徨っていた。
助けを求めたいのだが、声を出せば薄れてしまう恐れがある。
色素が抜けていったような白っぽい姿になりながら、釘三姉妹は呼吸を荒くして何とか進んでいるのだった。
釘家は呪われた。
一人の魔女により消滅の危機にあった。
アインベッカーが握り締めている手紙に全てが記されていた。
釘の森に住む魔女エルダの姉、マチルダは酷く嫉妬深い魔女である。
彼女はエルダに夫が出来た事を快く思わない。子供が生まれた事も、勿論。
マチルダは使い魔を釘一家の元へ送った。
現在の一家にではない。
過去の。
エルダとその夫、酒菜が出会う前の時代に送り込んだのだ。
エルダと酒菜が出会わないよう。
酒菜がマチルダと出会い、エルダから全ての幸せを奪うよう。
三人の子供たちが生まれないよう。
釘一家は、三姉妹は、今や消滅の危機に瀕している。
危険な事ではあるが、どうか釘一家の過去に介入し、酒菜がエルダと結ばれる、正しい選択が出来るよう導いて欲しい。
命が消え去るその前に。
芥川茶川・筆
怪しい力の篭った手紙は、過去を変える勇気を持った心の持ち主に届くようになっているらしい。
手紙を受け取り過去を変えるか、それとも歴史を変えるタブーを犯さぬ利口な選択をするかはあなたの自由だ。
……どうする?
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