〜13〜
回廊から送り込まれた二足歩行のトカゲがうろつき始めた。色はオレンジ。やたらと目立つ色合いである。
普通のトカゲが蟹股で歩いているので、何と言うか恐ろしくは無い。ただ、異様なだけだった。
そんな異様な物が辺りを見回しながらうろうろしている。
探している相手はかの両性具有だった。清水の命により迎えに来たのだが、未だに見つかっていないらしい。
のんびり歩く爬虫類が、回廊の黒子を探索していた。
探されている黒子はといえば、学園にある「立ち入り禁止区域」と呼ばれる林だか森だかに転がっているのだった。
生徒だけでは太刀打ちできないであろう気持ちの悪い生物やら意味不明な何者かやらが生息する場所なので、有刺鉄線と金網で区切られている其処。
三戦士の冷たい嵐に打たれた蜘蛛は、吹っ飛ばされた際に金網を飛び越えてその区域に落ちたのだ。
寝転がっているスパイダーへ、黒と黄色の斑模様が近づいてくる。それは虎の形をしていた。物凄く気持ち悪い色の虎だった。
しかもでかかった。
恐らくスパイダーと同じくらいの高さはあるだろう。そんな虎なのか何なのか分からない生き物が、回廊の黒子を食おうと歩いてきていた。
スパイダーの頭に牙が突き立てられる、瞬間。
「今寝てるんですぅ」
不貞腐れたような声がして、虎の首が絞まった。
白く光る柔軟性に富んだ糸が周りの木々に絡みつき、虎の首にもぐるぐると巻きついている。倒れているスパイダーの腕が軽く引かれた直後、虎が倒れ、二度と動かなくなった。
「っあ゙ー……痛い痛い痛い……あ゙ぁ゙痛い」
おっさん臭い声をあげながらむっくり起き上がるスパイダー。
胸や腹にはガラスが突き刺さり、服の背中は落下の衝撃で所々破けていた。よろよろと起き上がり、脱げていたぽっくりを足先のみで器用に履く。
「此処、何処で御座いますかね」
ぼーんやりと呟く敗北者は、空を見上げる。
馬鹿でかい猿に襲われかけたので、糸で締め上げておいた。
← →