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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -
〜12〜

 網が暴れる。
 正確には、網の中身が暴れている。
 赤と青の二つの影が目一杯に動き回っていた。

「さぁてさてー? どう足掻いてくれるので御座いますかな? 次男坊君」

 笑いそうな声でじりじり近づいていく蜘蛛に、十六夜は身動きが取れなかった。繊維に締め付けられ、体を思い通りに動かす事が出来ない。
 銀色に輝くワイヤーが十六夜の首に触れた。ゆっくりと首を絞めようと這い寄る糸を目の前に放電を繰り出すが、やはりというか何というか、絶縁体のワイヤーには効果は無かった。
「それとも、此処でジ・エーンド?」
「「させるかぁ!!」」
 近くで轟音が響く。
 網を破り捨てた二匹の蛇が勢いをそのままに、スパイダーへと突進していた。
「おふっ!?」
 まともに突進を食らい、転がる黒子。
 意識を蛇に向けたせいか十六夜の拘束がやや緩んだ。
 それを確認した直後、次男坊は立ち上がった。
 両手に電撃をため、一気に放つ。
「ワタクシのワイヤーは絶縁体だとあれ程……!!」
 すぐさま糸で体を包む蜘蛛。雷はそんな蜘蛛の方へ。
 いかない。
「あらら」
 驚いたような声で雷を見送る蜘蛛。
 視線の先には、吊るされた長男と三男の姿があった。
 高熱で溶かされる生物的な糸に、兄と弟の体は解放される。電撃がやむと同時に二人は床へ降り立ち、圧倒的な数の暴力によってスパイダーを圧倒するに至った。
 チートっぽいが、次男は頑張った。
 十六夜は右手に雷を渦巻かせる。
 それを見て、黄昏が左手に氷雪を渦巻かせた。
 両手に風を帯びた長男が、十六夜と黄昏の間に立つ。
「絶縁体だっつぅけどよ」
 蜘蛛を睨み付けた十六夜が口を開いた。
「雷と、氷と、風でいっぺんに攻撃したら」
 それに黄昏が続ける。

「絶縁体どころの話では……無いな?」

 明星の言葉に、スパイダーの口からわぁお、という感想が小さく零れた。
『食らえ、三戦士合体!!』
 逃げる暇も与えず、三兄弟の放つ冷たい嵐が教室を襲った。
 タイルが剥がれ、黒板がひしゃげ、壁紙は切り刻まれる。
 暴走や不道徳を許さない長男だが、今回ばかりは特例である。
 回廊の構成員を目掛けて迫る嵐は、瓦礫を交えて窓の外へと突き進んでいくのだった。



「うん、うん……負けちゃったか」
 薄暗い空間で、モニターを眺めながら清水が呟いた。
 服は瓦礫によってずたずたに切り裂かれ、氷によって手足には凍傷を負い、糸は柔軟性を失い暴風によって千切れ、雷が体を貫き走っていった。そんな黒子が力なく宙を舞う。
 あっという間の出来事に、笑うしか無かった。
「これで、スパイダーも要らない子……かな」
 そう呟く清水の形相が、歪んでいく。
 笑みは笑みだが、其処に喜びや楽しさや、嘲笑すら無かった。
 怒りや悲しみのみが篭った、歪んだ笑みだった。
「……何だろう。ムカつくぅ」
 声が出ない笑いが部屋を満たす。
 モニターを睨みつけながら、清水が笑う。
 薄暗い部屋が更に暗くなるような、そんなおかしな笑みだった。

「構成員に告ぐ! スパイダーを回収しておいで! あれは僕のだ! 学園にはやらないよ!」

 異様な執着を見せ付けるように、怒号が響く。
 怒鳴る事も叫ぶ事も無かった清水のあまりの声量に構成員たちは戦き、弾かれるように回廊のロビーから出て行った。
 清水は続ける。怒りと恨みに任せて。

「宵闇ジョーカーに伝えて! あの学園、ズタズタにしてやって、って!!」
 
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