×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
〜11〜

「あらあら、ようこそ」
 黒子は言った。……扉を荒々しく開けて入ってきた次男に向かって。
「二人に何しやがった」
 苛苛した様子でガンを飛ばす十六夜に、黒子は肩を竦める。
「いいえ、何も。捕まえただけで御座いますとも! あなたを捕まえて、全員まとめて嬲っちゃおうと思いましてで御座いましてv」
「ざけんな」
「勿論大真面目」
 白い膜に体を拘束された兄と弟を見、十六夜はスパイダーへ向き直る。
 掌から漏れるのは赤と白の稲妻だった。
「焼き焦げろぉ!!」
「あらやだいきなり!?」
 攻撃の塊が黒子をぶちぬく。
 その衝撃で窓ガラスが砕け散ったが、それを兄に咎められる事は無かった。
 今、緊急事態だし。
 火花が少しずつ薄れていく中、黒い影が蹲っているのが見える。
 それは、無数の白く光る糸に囲まれている。
 糸が火花に触れ、弾き飛ばすのが見えた。
「……何だそりゃぁ」
「んふふふふ! ワタクシのワイヤーは絶縁体で御座います!」
 誇らしそうな黒子。
 立ち上がると指を鳴らす黒子。
 それだけで十六夜の動きは止められた。
 十六夜の衣装は強化布が使われている。
 布。
 繊維で出来た。

「布。んふふ……お兄ちゃんや弟ちゃんより捕まえるのは簡単で御座いますねぇ」

「てめ、ざけんなボケェ!!」
「大真面目だってさっきから言ってるでは御座いませんか。あら、小さい。下駄抜いたら何センチー?」
「死ねえぇぇぇ!!」
 繊維に締め付けられ、縛り上げられたような姿勢になった十六夜が叫ぶ。
 人の神経を逆なでするのが得意な蜘蛛は、楽しそうにくねくね踊っていた。
 徐々に、繊維が圧迫を始める。
 息苦しさを覚える十六夜だったが、窓から見える光景で意識を保たせていた。
 蜘蛛は、教室の真ん中にいる。
 それで良い。
 それが一番、画になる。
「服、着てなけりゃてめぇに勝てるんだよな?」
 十六夜が呟いた。
「え、何それ露出狂? 警察にピーポーで御座いますでしょ」
「へっ……そりゃ、どうかなぁ!!」
 次男坊が声を張り上げる。
 直後。

「神霊をこき使うとは、後で覚えておれよ小僧!!」

「しかし悪くは無い案だ!」

 ガラスが砕けた窓枠から飛び込んできたのは、大きな二匹の蛇だった。
 蛇たちは黒子を押しつぶす。そして巻きつき、身動きが取れないようにしてしまった。
 十字の形での、蛇による磔である。
「あららら? おややや?」
 きょとーん、といった表現がよく似合う声色で、黒子がなすすべも無く蛇に捕まっていた。
 教室に張り巡らされた白い壁が、動揺でもしているかのように震える。
 天井に張られた糸の塊がハンモックのように垂れ下がってきていた。
「二人を解放しろ!」
 十六夜の言葉に、蜘蛛はすっとぼけた声を出す。
「え? これで勝ちとか思っちゃった?」
「な……んだと!?」
 黒子が笑う。ははっ、と黒いネズミのような声で笑う。
 やめろ著作権で問題になるから。
 スパイダーが首をかしげた直後、天井に下がっていた蜘蛛糸製の網が勢いよく落ちてきたのだった。
 スパイダー目掛けて。

「ぐっ!?」

「これは……」

 蛇たちが戸惑う。糸が粘つき、身動きが取れない。
 スパイダーを締め付けようにも、糸に邪魔されて出来なかった。
 そんな中を黒子は歩く。拘束が緩んだ隙を潜り、糸に触れてもくっつく事無く。
「スパイダーめは、ちょっと頑張り屋さんなので御座いますよぉ」
 十六夜は倒れ、もがき始める。
 繊維が急激に締め付けられてしまった。
 スパイダーが、頑張り始めてしまった。
「絶縁体のワイヤー相手に、何か出来ますで御座いますか〜? 次男くんv」

 布の奥で見開かれた目が、生意気な挑戦者を見て笑っていた。
 
top