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- ナノ -
〜9〜

 緊急事態の信号が発されていた。白い糸の塊から流れるそれを受信した末弟が走った。通信機に声をかけても返事が無いのが心配だった。
「お兄ちゃん!」
 目の前に十字の形で磔にされている兄を見た末弟は、急いで駆け寄った。
 鋭いつららを何本も従わせて。
 ねばつく糸を切り裂こうと氷の塊を打ち込んでいく黄昏。少しずつ、ぷちぷちと音を立てて切れていく糸たちに、明星が苦しげな声を出す。
「エース……逃げるんだ……私の事は良いから」
「お兄ちゃんが緊急の信号を出してくれたんでしょ! 僕は助けるもん!」
 糸を引っ張りながら一生懸命答える黄昏エースに、明星キングは首を横に振る。
 不思議そうに兄を見上げる末っ子は、長兄からの言葉に身を竦ませるのだった。

「緊急信号を送ったのは……敵の策略だ」

「え……」
 言葉を失った末弟に黒い影が近づく。
 黄昏よりも遥かに高い身長のそいつは、ぽこ、ぽこ、と気の抜ける足音をたててゆっくりと背後に陣取る。
 恐る恐る振り返った黄昏が悲鳴をあげる前に、粘着質な糸の群れが襲った。



 裏庭では機械的な警告音が響いていた。
 何事かと身を竦ませる二匹の蛇をよそに通信機を見る国原は、そこで二人の戦士が緊急事態にあるという信号を受け取った。
「兄貴とエースが!?」
 瞬時に国原学に交代し、驚愕の声をあげる。二人揃っていれば大概の相手に苦戦する事など無い筈だった。
 風と氷だ。お互いを邪魔する事なく動ける組み合わせ……だった筈なのに。
「墨忠さん、ごめん! 俺たち遊べなくなっちまった! 兄弟が危ねぇんだ!」
 膝の上から跳ぶように降りた学が駆け出す。
 緊急信号を見て、黄昏と同じように二人を助けに行こうと通信機で二人の居場所を確認していた。
「三階の空き教室か!」
 通信機に手をかざす。お決まりの文句を高らかに唱えた。
「変身!!」
 赤、白、青の和服、そして下駄。
 隈取のような仮面姿になった十六夜が走り出そうとしたその時、体が変に浮く。
 褐色の肌と赤い長髪の青年姿となった蛇、山菅彦が、十六夜を小脇に抱えているのだった。
「敵の罠だとは思わんのか、学」
「ちょ! 離せこら! 持ち上げんなっての!!」
「少しは冷静にならんか馬鹿たれ!」
「さっきまで暴れまくってた蛇が言うなボケー!!」
「神霊に向かってボケとは何だ小僧!!」
 熱血対熱血。
 阿呆のような言い争い、勃発。
 蛇橋彦がしょっぱい物を見るかのような目で、二人を眺めていた。
 
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