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井戸の中は退屈だからさ(仙太郎)

 三十年、呪い続けた。
 弟も、俺を恐れて逃げてった家族も、関係ない奴らも全部巻き込んで呪い続けた。
 三十年、井戸に縛られ続けていた。
 狂骨になったあの日。井戸に俺の死体があると分かったあの日。それでも俺は周囲を呪うのが楽しくて、井戸に近づく輩を無差別に狂わせていた。
 結局俺の骨は回収されないまま、井戸がマイホームの三十年を過ごす事になり、正直、しんどくなる日もあって、俺は退屈で退屈で。
 関係ない人間を、井戸に触ったとか難癖つけて祟るのは面白かったが、どこか満たされない気分だったから。
 俺だけが要らない子なんだ。化け物で、迷惑な奴になってよ、俺だけ周りに誰もいねえじゃねえか。井戸ん中で一人、てめえの骨ガチャガチャ言わせて、馬鹿みてえじゃねえか。
 誰か着てる時は良かったさ。暇潰しができるんだもの、昼も夜もなく呪い撒き散らして笑ってよ。
 そのうち狂骨に関わる輩なんぞいなくなって、本格的に暇になりやんの。そしたら一日が一年くれえ長く感じるようになって、俺は井戸の中で二十四時間の大半を寝て過ごすようになった。
 暇は敵だ。余計な事を考えちまうから。
 一人ぼっちなんつう可愛い単語を使って堪るかってんだ。
 三十年の間、呪っていた。
 全部、全部、周りも俺も全部だ。
 恨むしか出来ない、傷つけるしか出来ない、呪いと祟りにまみれた自分をひたすら呪って、その原因作った弟も呪って、暇で、退屈で、一人で、無性に叫びたくなって喉が枯れてすぐに直って化け物で。

 そしたらよ、いきなり、俺に目ん玉増えやがったの。

 魔方陣?そんなもんは見当たらなかったな。
 クレヨン持ったお坊ちゃんがこっち見てんだ。
 何でだか知らねえけど、呼ばれたような気がした。目の前の僕ちゃんが俺を呼んだような気がした。
 俺の周りを目玉がふよふよ浮いてやんの。キモッ!何だこれキモッ!って目玉の事言えた義理じゃねえんだけどさ。
 井戸なんか何処にもなくて、見慣れない風景で、ああ、解放されたって思った。
 一人ぼっちとかいう可愛い単語を使わなくて良かった。大正解!俺、天才。
 それっから大して呪いっつう呪いは撒き散らせなくなったけどさ、それでも、俺は平気な気がしたんだよ。

 大丈夫だ、もう――。
 
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