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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
〜5〜

 戦士を探している。学園の見回りをしているらしい戦士の長男とやらを。
 そいつを倒せば回廊側の利益になるから。そいつを倒せば、きっと……。
「何を考えてるんだい?」
 突然、声が降って来た。
「むっ!?」
 驚いて立ち止まったスパイダーの前には、金髪碧眼の青年がにこやかに立っている。頑張ってるかい? と手を振る青年は遠慮なしに近づいて。
 腹に拳を突きたてた。
「ぐぅっ!」
「学園祭、楽しそうだね〜?」
 頬に往復で平手を打ち込み、姿勢を崩した黒子の頭を掴み、顔に膝を入れる。拳をもう一度腹にめり込ませ、最後に思い切り股間を蹴り上げた。
「ぎゃぅっ!?」
 動物じみた悲鳴があがり黒子が倒れ伏すのにも、青年……清水は気にしない。
「お前、殴られるの好きだっただろ? これはご褒美ね」
「あん……有り難う御座います、ご主人様……!」
 頬に両手を当ててうっとりとした声を出すスパイダーに、清水は頷く。従順な僕かつ奴隷かつ実験台に、笑顔のまま告げた。
「雑魚を無差別に倒すより、効率よく実力者を消していって欲しいんだけど、分かるかい? 分からないほど馬鹿じゃないと信じたいな」
 高圧的な物言いに、しかしスパイダーは動じなかった。
「かしこまりました、ご主人様……実力者を効率よく、まとめてズドンで御座いますね!」
「そうそう。良かったよ、それくらいは分かるんだね、お前」
 清水は何でも無い事のように足を上げた。
 床に這っているスパイダーめがけて、思い切り振り下ろす。
「ぁがぅっ!」
 頭を床に衝突させた長身の黒子から低い声が漏れるが、清水は頭を踏みつけたままで言葉をつむいでいる。
「あとね」
 ぐりぐりと踏みにじりながら、回廊へ戻るための空間ゲートを作り、彼は黒子へこういうのだった。

「お前、何か仕掛けられてたよ? ボコるついでに解除してやったからさ、有り難く思いな? 思わなかったら、その腕へし折るからね」

「は、ぃ……有り難う御座います、ご主人様。スパイダーめは幸せに御座います」
「そうそう、それで良いんだ。お前は躾け甲斐があって良いねぇ」
 爽やかに笑う清水。
 床に倒れたまま浅い呼吸を繰り返すクモを起こしてやることも無く、彼はゲートをくぐっていく。
 ただ命令をするためだけにフルボッコする辺り、そうとう捻じ曲がった人格を有しているようである。
 
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