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〜完〜

「私が悪いんだよ、墨忠さん」
 優しい掌を感じながら、国原が呑気な声を出した。
 何も言い返せず所在無さげに舌を覗かせる二匹の蛇を見ながら、国原は再び上を向く。
 やはり大きな胸に邪魔されて見上げきる事は出来なかったが、構わずに続けた。
「私が、意味も分からないのに頷いたから、二匹が振り回されたんだよ」
 ね。と二匹に向き直る国原に、瘴気によって鱗からの痺れが取れない青い蛇が、首を横に振った。
「もう良い」
 そうとだけ言って、首を横に振った。
「何が良いものか! 我等の世継ぎは……」
「其処の百足も言うていたろう。半妖に神霊の子を産ませるとなると、母体が無事かどうかの確証も無い。元々足元を見たのは我等なのだから」
「百足如きの言い分に賛同するというのか!!」
「落ち着け、兄弟。山神となりし蛇を今から探しても、遅くは無かろう」
 目を覚ました、といえば良いだろうか。蛇橋彦は静かに墨忠と国原を見つめ、淡々と口を開いていた。滅びたくは無い一心で、傷つきたくない一心の子供に騙まし討ちを仕掛けたようなものだと、そう首を振っていた。
「二荒の血から遠くとも、山の蛇を伝おう」
「は、今更気付いたんか。遅えにも程があんで。このノロマ共!」
 俯きながら物を言う青い蛇と、それを笑う墨忠に、瞬きを繰り返す国原が不思議そうに尋ねる。
「この学校、蛇なら沢山いるのに、山の子じゃないと駄目なの?」
「その蛇は妖怪か」
「妖怪が殆どだけど、探せば神霊もいるんじゃないかな」
 シリアスな雰囲気で進退を決めかねている二匹と、この展開を理解しているのかいないのか、今一分からない話し方である。雷の気配を持つ娘は、そこらに生えていた花を摘みながら、栃木からはるばる来たのだからゆっくりしていけば良いのに、と言った。
 手の中でもそもそと花を弄り、何やら小さな輪を作る。
「これ、墨忠さんのね」
「おう」
 先程のシリアスな雰囲気を全く気にしていない様子で出来上がった指輪を持ち上げる国原は、蛇たちの将来や種の存続について本気で学園での調達を考えていたらしい。
「やっぱり山で探さないと駄目かなぁ、墨忠さん?」
 真剣に悩んでおるのだぞ! という山菅彦の叫びは国原に綺麗さっぱりスルーされた。
 どうやら国原、熱血で煩いものに対してのスルー能力が高いらしい。
「……考えさせて貰おう」
 文、話を聞け、と喚く山菅彦と、あのさぁ煩い、ときつい返し方をする国原。
 一人と一匹のやり取りに苦く笑い、蛇橋彦は小さく答えた。
 
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