〜3〜
池のある裏庭を通り、国原は池のない裏庭へ向かっていた。
ハロウィン喫茶から目的地へ向かうには、池のある方から進んだ方が早いのだ。
「あー、これ、砂波銀のだよね」
池の近くで脱ぎ捨てられた上の服を見かけた。
拾って畳んで、抱えた。
会った時に返そうと立ち上がり、そして、妖人科の彼を見る。
「あれ、黒沼さん?」
こんな所で出会うとは奇遇である。
水妖繋がりで砂波銀がいれば話も弾んだかも知れないが、砂波銀は恐らく森の奥だろうと予測が出来ていた。
ゴズメズという二足歩行する牛や馬のモンスターが彷徨いている、普通の人なら入りたがらない奥の奥に、綺麗な湖があるのだ。
幼なじみの行方に見当をつけながら、国原は池のない裏庭へ向かって歩いて行った。
その幼なじみの服を抱えて。
「やあ、お待たせ」
赤と青の蛇に声をかける。
蛇達は頭を起こすと雷使いの姿を確認し、すり寄って行った。
赤い蛇が言う。
「十年前の約束を果たす日が来たぞ」
青い蛇が言う。
「我等と婚姻しようぞ」
国原は、さあ説明するぞと言わんばかりに微笑んでいた。
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