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激動愛欲衝動色欲(御境)

 小さな体を、後ろから抱き締める。細くか弱い体躯を潰してしまわぬよう、大きな腕と、虫の足のような腕とで包み込んだ。
 私の部屋は狭い。この方が暮らすお部屋とは違い、住人の為に合わせて貰えるものではないからだ。
(姫ヲ一人ニシタクハナイ)
 騒がしい胸の内を無視する。
 最近、左手の細い(骨のようだと私は思う)指で姫に触れると、擽ったいような、満ちたようなお顔になられるのを発見した次第である。頬をなぞれば、姫はゆるりと瞼を閉じられた。
 大変、愛らしい。
(押シ倒シテ仕舞イタイ)
 ぞわりと、心が再び騒ぎ出した。
 やましい欲望を姫に近づけてはならぬ。
 年上としても、従者としても、恋人としても、私は私の淫らな愛欲を露見させる訳には行かぬのだ。
(糸ヲ引ク程、強ク口付ケヲ)
 黙りやれ、腹の虫。
(愛シタイ、奥深キトコロマデ)
 黙らねば、今すぐにでも、私の腸ごと潰してくれようぞ。
(オオ、怖ヤ怖ヤ)
 抱き締める力が強くなり、姫は不思議そうに、私を御覧になる。
 表情を隠す目的もあり、姫の御髪と肩に顔を埋めた。
 落ちたものだ。
 浅ましき欲を抱いた瞬間、私は姫の隣に立つ事すら許されぬ俗物へと成り果てた。
 落ちたものだ。
 本当に。


(姫、コノ罪深キ色情ヲオ許シ下サレ)
 
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