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「#幼馴染」のBL小説を読む
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〜5〜

 目玉が浮遊する学園内。
 視聴覚室への避難を済ませた特殊能力科の生徒達は、浮いている不気味な目玉のほかに、重大な事に気がついた。
「笹川君と雨宮君は……?」
「五木君と谷君もいないわよね」
「今気づいたんだけど、国原さんもいない」
 一人の女子が声を上げたのを皮切りに、次々と避難できていない生徒の名前が挙げられる。ざわつく視聴覚室。
 嵌め殺しの窓は水の様なものに守られていて無事であるこの部屋で、戦闘員と戦わない事を選んだ生徒達は大人しくしている他ない。


 陣内陣内のもとへ目玉が到着した。
 箇条書きで三つの項目が書かれている手紙を受け取った陣内は、屋上に誰かがいるのかと推測するが、もし屋上にいるなら、こうも窓に近い場所を打ち抜けるだろうかと思考を巡らせる。
 屋上の中心は無事。
 中心にいるとするなら、雷はもっと広い放射線を描くはずである。窓が何枚も割れて、生徒や教員が怪我をする程狭い放射である理由が分からない。
「何だこりゃ」
 手紙を覗き込んだ十六夜が声を上げた。
 誰から送られてきたのかは、彼には分からない。しかし、この情報が確かだとするなら打つ手はある。十六夜は腕に装着した通信機のスイッチを入れた。


「十六夜君、有り難う」
 手紙の内容を把握し、伝えた十六夜へ礼をするのは、パソコンに小さなレーダーを接続し、同じく屋上に何らかの気配を感じ取った真島だった。
「真島の兄さんよ!」
 通信の向こう側で、十六夜が呼ぶ。
「俺のセンセが」
「お前のじゃない、特殊能力科の。強いて言うなら俺の」
「なんでお前のなんだよ!」
 早瀬が通信に割り込み、十六夜の失言だか放言だかに訂正を加えた。が、訂正になっているかどうかは分からない。
 喧嘩はやめなさい、と陣内の声が入るが、問題は本当にそこなのか。
「まあ、うちの科のセンセが言うにはよ、放射が狭いってのも、考慮に入れといて欲しいそうだぜ!」
「放射が……ああ、なる程。計算してみる」
 真島はすぐに陣内の考えに気づいた。高さだ。
 簡単に言ってしまうと、地面に立って学園を狙うのと、大きな樹木に登って学園を狙うのとでは、学園に対しての攻撃の角度が違うのだ。
 攻撃の拠点が低ければ低いほど、学園との角度は水平に近くなる。
 今回、雷は放射状といえど、垂直に近い角度で落ちてきた。
「……相当高いって事か」
 通信を切った真島が、あらゆる可能性をパソコンに打ち込んでいった。
 レーダーが様々な高さを調査し、発生源を絞っていく。


「陣内先生」
 栃尾先生が妄想科へ到着した。
 教室へ入り、桜花先生をはじめとした面々に怪我がない事を聞き、妄想科に関係のない生徒――早瀬と十六夜の姿を認識して、陣内へ尋ねる。
「今回の騒動、特殊能力科の誰かが関わっている可能性は、ないんですか」
「分かりません。が、私は生徒を信じます。生徒が関わっていないと主張するなら、私はそれを鵜呑みにしましょう」
 陣内は答える。教え子をそっくりそのまま信じる、担任馬鹿な面を大いに露出しながら。
 陣内は桜花先生に、教室にいて大丈夫なのか、避難はしないのかと尋ねたのだが、桜花先生は一言、
「雷が急に角度を変えて教室に入ってくるんなら逃げなきゃですけど、その様子もないんで」
 そう返したという。
 この状況では下手に動かない方が危険が少ないと分かっている、教員として冷静な部類の言葉に、陣内は感心し、そして安堵した。
 妄想科は、強いようだ。


「……なんだ、これ」
 真島は言葉を失った。
 レーダーが探し当てたものを画像化し、モニターに映し出した際の事だった。
 学園の上空百メートルの位置。
 人工衛星のような装置が三台、旋回しながら飛行している中央。

 空中に静止し、確かに雷を落とす何ものかの影があった。

「明星!十六夜!黄昏!今から指示する地点に急いで向かえ!上空に敵あり!繰り返す!上空に、敵あり!」
 戦士の兄弟を補佐するメカニックは、力の限り叫ぶ。通信機がノイズまで拾ったが、そんな事に構ってはいられなかった。
 今頃、手紙を読んだ察しの良い生徒達も屋上か、屋上を狙える場所に立っている事だろう。真島は三兄弟を敵のもとへ案内する必要があった。
 上空へ、どうすれば案内できるかは分からないが、とにかく連れて行かなければならないと感じた。
 それがメカニックに出来る、最大にして唯一の助力である。
「……それにしても、レーダーを使い出してから、敵を察知しやすくなったな」
 真島は呟く。
「凄いだろう?僕が作ったそれ、自信作なんだ」
 清水はやはり、どこか自慢げであった。
 真島は、首を横に振る。
「都合が良すぎる」
「何だって?」
「敵の察知に最も適した機能を持つなんて、都合が良すぎると言っている。まるで、最初から敵の正体が分かっていたかのようじゃないか……清水」
 
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