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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
ハロー、ハーデンベルギア 終
「あと四年、待っててくれよ」
 楽しそうに買い物をしている両親を見ながら、電の字が入ったマスクをつける少年は言う。
「四年?」
 両親に手招かれ、素直に足を運ぶ十四歳。そんな携帯電話の彼を追いかけながら、ケビンは問うた。両親と一言二言会話して、テルテルボーイはケビンのもとへ戻ってくる。
「オイラが成人するまで」
「……香港は十八で成人か」
「そう。高校まで無事に卒業して、成人したら、あとは好きにしていいって父さんたちが言ってくれたんだ。……留学なり一人暮らしなり、な」
「理解がある親だな」
 成績が良いらしいテルテルボーイを前にして、大学へ行きなさい、と言わないものなのだろうか。超学歴社会の香港に住みながら。
 留学なり、と言っているあたり、少しは望んでいるのかもしれない。
「高校卒業したらイギリスに留学に来ねえか」
 試しにそう声をかけてみた。
「来ねえかってなんだよ。ケビン、イギリスに帰る予定でもあんの?」
 不思議そうな顔をするテルテルボーイ。それをちらりと横目で見て、ケビンは今までのどの声より小さく、こう告げた。

「胸はって親に紹介してえだろ、テルのことを」

「既成事実を作って逃げ場を奪おうとすんな」
「そ、そうじゃねえけどよ……聞いてくれ、前世じゃ俺は、お前に片思いをしていてだな」
「あー、はいはい」
「嘘じゃねえぞ」
「オイラも片思いだったよ」
「……マジか……両片思いってやつか」
「恥っず」
「おお、よし、テル、前世の雪辱を果たそうぜ。今回はくっつこうぜ俺ら」
「落ち着け」
 そわそわしている芸能人と、じっとりとした目で芸能人を見ている少年。少年の両親は、仲睦まじく何かを話しているらしい息子とその友人に、にこにこと温かい眼差しを送っている。
「テルが年下だって知ったときはどうしようかと思ったが……そうか、俺好みに育てる楽しみがあるってことなんだな」
「育てるも何も中身は大人のオイラだからな」
「体は子供だろ」
「おまわりさん、こいつです!」
「ああ馬鹿やめろ!」
 イギリスで安いアパートでも借りて、二人で暮らすのも悪くないかもしれない。そうなるまで、あと四年。せいぜい稼いで貯め込んでおこう、とケビンは思った。
 人間の姿をしているせいで耳が赤くなっているのがよくわかるテルテルボーイを前に、強く。

「すでに俺の好みだけどな」
「うっせえ、馬ぁー鹿」