灰色人さんが欲しい
2015.06.12.Friday
中間子というとなんか違うんですが、玄人さんと素人さんの間の存在が欲しいです。
いるのは分かってます。存在しているのは知ってます。灰色人さんという名前じゃないのも分かってます。
でもそういう人って表に出てこないじゃないですか。
特に、人に物を教える立場、となると。陰に潜み闇に忍び夜から夜へ隠遁して人目に付かない道を行くじゃないですか。
何が言いたいんだ。
えーと、あれです。
「趣味を人に物を教える人間は玄人でなければいけない」
っていう謎の風潮というか概念というか、そういうのが無意識でも何でも漂ってるように思うんですよ。
だから玄人さんが趣味を教えようとしてくれるんですけど、素人さんにとって玄人さんの助言って難しいんです。
「丸太の中には元から仏さんが入ってるから、それを削り出せば簡単に仏像が出来るよ! やってみてね!」
って言われて、素人さんは訳が分からないまま試して撃沈して、なんて難しいんだ……こんなにシンプルに教えてくれてるのに理解できないなんて向いてないんだ、手を出すべきじゃなかった……っていうのは大げさでしょうけど、多少は落ち込むんですよ。
一見分かりやすく教えてもらえてるから、それで出来ないと、簡単に言われてることができない! くそ! 自分ダメじゃん! って。
実はこれ、玄人さんと素人さんの間に灰色人さんがいないから伝わらないんです。
灰色人さんっていうのは、玄人さんが言うことをなんとなくでも理解できて「あー、つまりこういう事言ってるのね、了解」って返事が出来る人のことです。
玄人さんが噛み砕いて説明しても素人さんにはちんぷんかんぷんですが、「玄人さんが噛み砕いたもの」は灰色人さんには分かりやすいんです。
そして「玄人さんが噛み砕いたもの」を灰色人さんが噛み砕くと、そこでようやく素人さんに分かりやすくなる。
グラデーションの中間的な存在です。
さっきの仏像の話で言うと
灰「白さん、君は仏像をこんな形で彫りたいとイメージしたら、それをメモしないかい?」
白「うん、するよ。でも玄人さんは仏さんが元から丸太の中にいるからそのまま彫れって言ってた」
灰「それはね、木を彫り慣れた人が言う、玄人あるあるだよ」
白「玄人あるある?」
灰「そう、設計図を描いて、設計図通りに彫れるよう一回りくらい大きめに彫り出して、そこから少しずつ削っていくっていうやり方に慣れた人たちは、設計図を実際に描かずに頭の中で済ませるようになるんだ」
白「省略するんだね」
灰「そう、省略するの。それでいきなり一回り大きい大雑把な人型を彫り始めて、そこから頭の中にある仏さんのイメージに近づくように削るんだ」
白「へー、そうなんだ」
灰「それが『丸太の中に元から仏さんがいる』っていう言葉の真相だよ。慣れた人があるあるネタを言っているようなものさ」
白「じゃあ僕はどうしたらいいの?」
灰「設計図を描いたらいいよ。あと、彫刻ではないけど、粘土をこねて仏像のモデルを作って、それを見ながら木を削るっていう方法もあるよ」
白「あー、わかる」
灰「だろー?」
っていう。
玄人さんの言うことをなんとなく理解できて「分かる、それな」って言いながら、素人さんにこうこうこういう事だったんだよって説明して「分かる、それな」って言わせることが出来る人。
それを灰色人さんと勝手に呼んでるんですが。
そういう存在の人が欲しいです。
出てきてください。
中間の存在である、グラデーションを成立させてくれる人がいないと、真っ白な素人さんがジャンルに手を出してくれないんです。手を出してもすぐ引っ込めて立ち去ってしまうんです。
灰色人さんカモン!!
っていう勝手な見解。
玄人、濃灰色人、灰色人、薄灰色人、素人くらいのグラデーションで趣味界が存在してたらいいなーってぼんやり思ってます。
グラデーションなんだからくっきり色が分かれてるんじゃなくて混ざってる感じで、濃灰色人さんは玄人さんと話が合うし灰色人さんとも話が合うっていう混ざり具合で、灰色人さんと素人さんの境界は薄灰色人さんが取り持ってて曖昧になってる感じで、こういう悩みがあるんだよー、分かる分かるー、自分はこうしたらうまくいったよー、それなー、これ割りと面白いよねー、だよねー! って仲介する人がいる世界。
灰色さんが欲しいです。
本当に、本当に、灰色さんって割りと何処にでもいるんです。
顔を見せてください。お願いします。