文:釘夫婦の話(百合注意)
舌を絡め合わせる。
体が熱い。
お互いに抱き締めあいながら、息をつきながら、再び口付けを交わす。
湿った音が響くのを聞きながら、釘家の夫である酒菜(さかな)は呟いた。
「エルダさん、あなたは美しい」
すかさず唇にむしゃぶりついてくる夫の姿に長身の魔女が頬を赤らめる。
「酒菜……んっ、んんっ」
お互いをただ求め、今、この世には二人しかいないとでも言うかのように愛を確かめ合う夫婦は、とてもとても熱い抱擁をしあっていた。
「父ちゃーん」
「お母さーん」
「僕たちはどうすれば良いのかな」
子どもたちの目の前で。
腹が減った、と末の娘であるデュンケルが訴え、両親のいちゃつきぶりに顔を赤くしながら中間子のボックが目を逸らす。
読んでいた本をぱたりと閉じた長女のアインベッカーが尋ねる頃には夫婦の接吻は終わっていた。
「失礼。今から作ります。今日はミネストローネにいたしましょう」
「うむ、酒菜の料理は美味いでな」
「恐縮です、エルダさん」
子どもの前で堂々と愛を確かめ合う夫婦がいても良いんじゃないかという話。
2013/08/08 21:43
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