戦士三兄弟ショー観覧レポ1
ショーが始まり、ライトが一斉に消えます。そして舞台を照らす一台のスポットライト。
そこに立っているのは戦士ではありません。
戦士三兄弟おなじみの敵である悪の組織「凶ノ都(きょうのみやこ)」の幹部・禍魔です。禍魔さんはマガマという名前の通り、ガマガエルの怪人。太っていてふてぶてしい表情をした、組織のマッドサイエンティスト、という立ち位置のヴィランです。
三兄弟のショーは最初にストーリーの基軸になる人物がステージの中央に立つのが決まりとなっています。
今日は禍魔さんが中心となる話のようです。
私の友人は禍魔さんのファンなので後でサインを貰おうと思います。
「ああ、どうも皆さん、森園(もりぞの)博物館で見た人がちらほらいますね」
いきなり客席に話しかけてくる禍魔さん。そうでした、禍魔さんの登場は前々回の博物館ぶりなんでした。
「あの博物館を制圧できなかったのは、ひとえに戦士三兄弟のせい。今日こそは、私さんのおつむの良さを見せて差し上げましょう」
スポットライトが徐々に細くなっていきます。
禍魔さんの姿がだんだん消えていき、直後に爆発音。地響きがします。
そう、地響き。
このヒーローショー、ガチなんです。
何がガチって
「さあ行きますよ戦闘員ども! この広場を手中に収めてしまいなさい!」
「ギィーーーー!」
そういって素早く広場を駆け回る戦闘員たち。白と紫のマーブル模様の仮面を被った執事やメイドのような量産型たちが客席の周囲を包囲!
皆、手に手に大きなフォークやナイフ、スプーンなんかを持っています。
小さな子が泣き出してしまいました。その気持ちは分かる。
「待て! 凶ノ都! 好きにはさせないぞ!」
そこにとどろくイケメン声。
広場に冷たい竜巻が発生し、竜巻が収まった中央に立っているのは明星キングと黄昏エース君。
戦闘員が一斉に明星さんと黄昏君に襲い掛かりますが、明星さんが風の刃を作り出し戦闘員を弾き飛ばします。
そして
「つらぬきつららぁー!!」
黄昏エース君が出現させたつららが観客の周囲を取り囲み、客席を守るように辺りに漂います。
お分かりいただけたでしょうか。
特殊演出、一切なしです。
風も、氷も、彼ら自身が直接操っているんです。
特殊能力者たちがヒーロースーツを着ているんですね。おかげで大迫力。
観客たちに危害が及ばないよう細心の注意を払っているので安心して観覧できます。
「一般市民を襲うなんて、僕たちが許さないよ!」
一生懸命客席を守ってくれる黄昏エース君。おかげで客席は涼しく、泣いていた子供も泣き止んだようです。
「えーしゅ!」
「はぁい! 僕が守るよ!」
「うん」
ショーの上演中でもお客さんと会話するのがここの日常風景です。
しかし戦士の兄弟、十六夜ジャックさんがいませんね……。三兄弟の次男坊、暴れん坊で元気いっぱいな十六夜さん。
「やはり来ましたね、戦士兄弟……おやおや、一人足りないようですが、まあいいでしょう!」
白衣を着た眼鏡で敬語の悪役、禍魔さん。これで見た目がガマガエルじゃなかったら……せめてカマキリとかだったら格好良かったかなー……と思いますが、この見た目だからいいんじゃないかと友人は言います。コアですねー。
「この広場を悪と闇で覆ってしまいなさい! いでよ、三畳(サンジョウ)!」
禍魔さんが声を張り上げます。
すると広場の地面からにじみ出るように、誰かが現れました。
禍魔さんの右腕、オオサンショウウオの三畳(サンジョウ)。三畳は地面を液状化させて戦士兄弟に襲い掛かります。
泥を投げつけ、避けた明星キングを狙って掌底を突き出し、明星さんが掌底を掌底ではじき返し、黄昏君が三畳に氷の塊を投げつけました!
この戦闘シーン、毎回毎回アドリブだそうです。打ち合わせなし。悪役が負けることだけは決まってるみたいですが。
三畳が地面から泥をタワー状に突き出して反撃! これには兄弟も苦しいのか、せめてと、客席を守ることに集中している様子。
小さな子たちが一生懸命応援しているのを聞いて、黄昏君が立ち上がりました。
「大雪、こんこぉーっ!!」
空から吹き付ける雪。今、夏なんですけど、戦士のショーではこんなことザラですよ、ザラ!
太陽光を反射して虹色に輝きながら降り注ぐ雪が、三畳の泥タワーを凍りつかせていきます。三畳も急激に冷えてきた空気に対応できず、動きが鈍くなっている様子。
それをチャンスと捉えたのか、明星さんが手を突き出しました。
「カマイタチ!!」
風の刃が三畳に激突!
力なく倒れる三畳に禍魔さんが近づき、小声で「有り難う、下がりなさい」と。
恐らくこれアドリブでしょうけど、部下思いですね、ガマガエルさん。
「この広場は悪のパワーを増幅させるのにもってこいなのです。諦めるわけにはいきませんねえ……」
戦闘員たちが増えます。
戦士の兄弟が囲まれます。
その中で、禍魔さんがにやりと笑うのが見えました。
「少々早いですが、仕方ない。我らの秘密兵器を出して差し上げましょう……とくとご覧あれ!」
禍魔さんが指を鳴らした直後、物陰からドライアイスが勢いよく噴射!
さっきからこの会場めっちゃ涼しい。
そして、ドライアイスの煙幕の中、細身の長身の影がゆらゆらと現れました……。
2015/07/20 13:00
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