盗3
艶々とした毛並みの大狸が、三つ目の水晶をくわえて走っていく。
宝石店、占い師、古物商、あらゆるところに忍び込み、目当ての透明な球を持ち去っていく狸は、竹林に入ると変化を解いた。
片手には本。
そうして、水晶玉を竹林の陰に置く。
すぐさまその場を離れる狸は、次の水晶を探して走っていった。
書物のタイトルには、『蘇生』とだけ書かれていた。
「これ……ニュースでやってた……」
高際は目を見開く。
宝石店から盗み出された物が何故此処にあるのか。
「あいつ……家出した時、あの不良集団のところに入り浸ってたな」
不良集団。狢(むじな)。
バイクでの暴走行為や窃盗をしていた悪がきの集団。
暴走族とまでは行かない小心者の若者たちの集まりであるそこに、軽助は一月ほど世話になっていた。
「あの子たちは、こんな大きい盗みはしないよ」
重丸は、静かに言う。
「ママは、軽ちゃんもこんな事しないって思う」
「でも、実際に水晶は此処にあるんだよ、母さん」
それでも重丸は首を横に振る。不良集団だが、重丸の話を聞いてくれた。家にお泊りしなさい、と提案すれば了承してくれた。
悪さはするが根はいい子達だと、重丸は強く思っていた。
「うぅん……?」
唸り声。
軽助はかっぱらってきた古い教科書を何度も読み返していた。
それから、くすねてきた分厚い書物。
『蘇生』
そう書かれたページの小難しい説明文を何度も何度も読み直し、首を傾げる。
禁術。
法律に触れる。
蘇らせる方法は分厚い書物の法に書かれているし、水晶玉を使う方法があるので間違いない。
しかし。
それに対する仕組みが
「……此処まできてんだ」
軽助は立ち上がった。
理解しきれているわけではないが、最後まで遣り通さなければならない。
『続いてのニュースです。水晶玉が、また……』
茶色は走っていく。
盗んだ品物を持って。
既に三つの場所に安置した。
残る箇所は三つ。
狸は、走っていく。
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だらだら続いてます。話の進みが遅いけど気にせずお願いしたい。
2014/01/03 21:55
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