桃桃とオサナクナールEX3
「姉さん、やりやがったな」
白子の冷たい一言にめげることなく、スプレーは噴射された。
次々に五つか六つの子供が生産されていく。
特殊能力科へ足を運んだ桃桃はそこで生徒の一人にスプレーをかけようとしたわけだが
「私の生徒に何をしている」
自ら盾になった陣内に邪魔をされ、長身の十七歳の少女を生産してしまうのだった。勿論、能力は劣っていない。
「あら陣内、そっちの姿も可愛いわんv ちゅーしたいくらいv」
「遠慮する。何だこれは。ふざけているのなら重力を反転させて投げ飛ばすぞ」
チョークを浮かせた陣内が桃桃をねめつける。
「ちぇんちぇ」
「ちぇんちぇー」
薬が切れてきたのだろう、言葉が話せるくらいに成長した国原姉弟が陣内を指差す。すぐさま五木巽が飛んできた。
白子から二人を受け取り、そそくさと席に戻る。谷章がぷにぷにした国原双子を見て顔をほころばせた。
「可愛くなったねえ」
「言ってる場合じゃないと思うよ」
「しょー」
「しょー」
桃桃は教室の中に入ってきた。白子が力ずくでそれを止める。手には謎のスプレー。
桃桃の性格を知っている特殊能力科の面々はそれだけで戦慄しただろう。よからぬことを企んでいると。
「さあ、みんな! 可愛い可愛い萌えっこちゃんになる時間よぉんv」
「出て行け!!」
すぐに陣内の持つ能力、重力の操作で教室の外へ吹っ飛ばされたが。
「ばばーい」
「べー」
呑気に手を振る小さい文と、舌を出す学。
桃子を追いかける白子を見送り、特殊能力科にはとりあえず平和が訪れた。ようだ。
「特殊能力科は失敗……残念〜」
廊下を歩きながら辺りを見回す桃桃は、次の標的を探しているらしかった。
「次は妖人科? 妄想科? それとも陰・陽・科?」
「スプレーの残量から考えるにそう多くはいけないだろうね。行かせないけど」
桃子からスプレーを奪おうとする白子。
「いやんv」
白子からスプレーを守ろうとする桃子。
桃色の二人が一つの霧吹きを巡って争う謎の光景である。
「さっさと手放すんだ、姉さん!」
「使い切らないと勿体無いでしょん?」
取っ組み合いのようになり始めた二人の手に力が篭る。
スプレーの噴射口がきりきりと悲鳴をあげる。
「いい加減に!!」
「そっちこそ!!」
そう二人が叫んだ瞬間。
通り縋った誰か目掛けて、スプレーが大噴射された。
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梨汁ぶしゃぁー!
次あたりで終わりますです、オサナクナールEX騒動。
2013/11/07 02:35
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