×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
平凡、昼日中
 平野藤四郎と前田藤四郎が障子の向こうですとんと正座をしている。
 キラキラとラメが入った、肩を出すデザインの服装をした女が、部屋の中で万年筆を片手に書類の整理をしている。
 地味なデザインの、長袖のシャツとベストを羽織った、黒い短髪の男……否、女が、それを見守っていた。
 二人は審神者補佐である。
「演習したい」
 金髪の女が言った。
「事務処理を頑張れ」
 黒髪の女が低い声で返した。
 あああ、と挫けた様子で、金髪の女は天井を見上げる。そして書類を脇に退けて、頬杖をつくのだった。
「同田貫と演習で叫び倒したい」
「それを言うなら私とて、今剣と岩融とともに外に出たい」
「出てくりゃいーじゃん、お土産よろ」
「見張りがいなければお前サボるだろう、書類整理」
 二人のやりとりを聞いてか、障子の向こうで平野と前田がくすりと笑った。
 冷たいお茶を用意しましょう、と平野が言う。
 お茶菓子はお饅頭でよろしいですか、と前田が言う。
 それに黒髪の方が答えた。
「先に二人が休憩を取った方がいい。そこで待ちぼうけは暑いだろう」
「いえ、そういうわけには」
「主を待つのも近侍の務めですので」
 義理堅い短刀たちである。
 す、と障子を開けて、黒髪の方の女が二人をうかがい見る。男と間違うくらい髪が短い女は、体格も男に近かった。身長が高い。
「ならば、茶と菓子を用意するついでに、つまみ食いをしてくるといい」
「つまみ食いですか?」
「いち兄に叱られてしまいますよ」
「私の許可済みであると言えばいい。ここは日差しが当たって暑いから、冷たい茶を飲んでおいで」
 平野と前田は、くすり、と笑った。
 黒髪の方の審神者補佐は、こうして「こっそり」甘やかしてくれるので、まるで男親のようだと思うのだ。
「いーよいーよ、ケーキでもお団子でも食べといで! お小遣い渡すから買ってきてもいいし」
 金髪の方が大きな声で大っぴらに甘やかしてくるので、それには平野も前田も慌てた。そんなわがままを言うつもりはないと。
「戻ってくる時に座布団を持っておいで。床の上に直に正座では足が痛かろう」
「ていうか部屋ん中に入っておいでよ、日差しよけにもなるしさあ」
 口調も見た目も全く違う二人に同時に気遣われ、短刀二振りは顔を見合わせ、笑い合った。
「それでは」
「つまみ食いをして参ります」
「うん」
「行っといで」
 ととと、と軽い足音が厨に向かっていく。
 明るい日差しが部屋に差し込んでくる。
 金髪の女があくびをかみ殺す。
 黒髪の女はそれら全てに微笑んで、障子を大きく開け放った。

「風鈴をつけよう。平野と前田に涼をとってもらわねば」

「平野も前田も昼寝すればいいんじゃね? ずっとあたしの仕事待ちで疲れてるだろうしさ」
「さっさと終わらせい」
「りょ」
 何でもない一日の、何でもない昼下がり。