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ご家族
「兄さん、昔から変わらないな」
「兄さんって呼ぶのやめてちょうだい」
 白い狼に向かって、下半身が大蛇の姿をした彼がぽつりとこぼし、訂正の文句をつけられていた。
 彼の背には、体半分が死に、もう半分が生きている少女が、大人しく座っている。
「昔っからクネクネクネクネしてるよなぁ、兄さ……姉さんは」
「クネクネしてんのは蛇であるあんたも同じじゃないのよ」
「クネクネの種類を一緒にしないでよ」
 ロキの子供たちが揃っている。
 ラグナロクでもない限り、顔を合わせないだろう三人が。
 じゃあラグナロクが起きるのか、というと、別にそうではなかった。たまたまフェンリルとアバドンがやってきた場所が、彼の管理する管轄だったのだ。
「で、そちらは義兄さんってところ? 姉さん、もっとこう……スッキリしたイケメン系が好きじゃなかったっけ?」
「スッキリしたイケメンは好きよ。でもね、実際に付き合いたいタイプとは、別なのよぉ」
「あー、ファンになるアイドルと付き合う恋人は完全に区別するタイプ?」
「それよ」
 なんだか、フェンリルの隣に立っている忍者がむず痒そうである。付き合いたいタイプとか、付き合う恋人とか、義兄さんとか、完全に「恋人の家族と顔合わせさせられている彼氏」のような扱いだからだ。
 蛇の彼の背中から少女が顔を覗かせて、アバドンを見た。
「フェンリルちゃん……逃しちゃだめよ?」
 おませな一言に、フェンリルは笑った。
 笑って、アバドンの手を握って、大きく頷いた。
「大丈夫! あたし達ラブラブだもーん。ね? アバドン? ねー?」
「いやぁ……照れるというか、なんというか……ラブラブねぇ……はい」
 あ、尻に敷かれるタイプだ。
 フェンリルの弟である彼は、心の中でそう呟いた。