訳あり家族
「ばぶう」
「本当にバブーっていう赤ちゃん初めて見たわ」
カゴの中で毛布に包まれて寝かされていた赤ん坊を見て、フェンリルは頬杖をつきながら呟いた。
拾ってきたのはアバドンだ。泣きもせず、怖がりもせずにアバドンを凝視していた赤ん坊に興味を抱いたらしい。
ペットじゃあるまいし、誰が世話をするんだと忍者の方を見る。イナゴ忍者は赤ん坊の体をくまなく調べていて、その度にばぶうばぶうと赤ん坊は何かを喋るのだった。
「目が赤いこと以外特徴的なものはなし、か……これはおそらく忌子でござるかな」
「いみこ……あー、縁起悪いとかそういう理由で迫害される子でしょ。この子がそうなわけ?」
「多分ねぇ。なぁにが縁起悪いスイッチを押したんだか知らないでござるけど」
ばぶう。赤ん坊はひょこひょこ足を動かして、毛布を蹴飛ばそうともがいている。
「パパでござるよー」
冗談でアバドンがそう言ってみたら、赤ん坊はきゃっきゃと笑い、フェンリルの方を凝視した。
「なぁに? あたしがママよーって言えばいいわけ?」
「きゃっきゃ」
「あらぁ、なら拙者たちは夫婦でござるか」
「やだ恥ずかしいー」
恥ずかしいなんて言っておきながら、フェンリルはアバドンにぴったりと密着し、赤ん坊を笑顔で覗き込んでいる。
赤ん坊は見ず知らずの両親を、それは嬉しそうに眺めていた。時折ばぶうと喋りながら。