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狼スイーツ
「これ、デビルチルドレン?」
 フェンリルに尋ねられ、アバドンは首を傾げた。デビチルというよりは、半デビル……いや、デビルになりかけ、といった方が正しい気がしたのだ。
 彼女の背にはピクシーの羽が生えており、腕はゆらゆらと揺らめく水のようで、柔らかな風が常に吹いていて、口から漏れるのは火の粉、歩けば土が盛り上がり花が芽吹く。
「デビルの寄せ集めのような気がするでござるな」
 しげしげと彼女を眺めて感想を口にするアバドンに、彼女はゆっくり顔を向けた。
「ピクシーと、ウンディーネと、シルフと、サラマンダーと、ノームと出会って共鳴したら、こんなことに」
「共鳴ねぇ……全部混ざるとは思わなかったでござるなあ」
「けっこう属性持ってるみたいだし、使えるんじゃない、この子?」
「そうは言ってもフェンリル殿、強いか弱いかで言ったらこの子弱いでござるから」
 共鳴の力を持った不思議な人間に興味津々といった顔で、フェンリルは彼女の肩に手を置いた。
 そして、彼女にこんな提案をするのだ。
「あたしがパートナーになってあげてもいいわよ、あんたの体質面白いし」
 新たな戦力として、ルシファー軍団にコールされた人間だと分かっていて言うのだ。
 逆らえないと分かっていて言うのだ。
 なんと悪どい狼だろう。
「……あなたと共鳴したら、どうなるんでしょう」
「知らなぁい。でも、あたしと共鳴しても、アバドンと共鳴しても、大食いにはなるかもね。ほら、あたしって主神飲み込んじゃうじゃない」
「それは怖い」
 いいのよ怖くて。それくらいじゃなきゃ可愛さをカバーできないじゃない。とよく分からない言い訳を口に、フェンリルは彼女に笑いかけるのだった。
「せいぜい役に立ってちょうだいね?」
 アバドンが苦笑してフェンリルを見守っている。
 彼は狼を止めてくれなどしないのだろう。
 ならば新たな戦力である自分も狼を甘やかすことにしよう。彼女はそう思い、小さく頷いた。