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かしゃり、と彼は言った。
 かしゃかしゃとスマートフォンで写真を撮り貯めていく彼女に、テルテルボーイはいささか不服そうだった。
 撮影ができて、計算もできて、インターネットにも繋げることができて、電話もできて、ゲームもできる。便利な便利な四角い板。
 対するテルテルボーイは、スマートフォンに比べれば旧式だ。できることなど限られているし、ディスプレイも大きくはない。
 可愛いお菓子を見つけてかしゃり。きれいな空を見上げてかしゃり。写真のデータ容量を気にせず撮影していく彼女を見て、小さくため息をついていた。

「なぁんか……オイラがいなくても楽しそうじゃね?」

「いやいや、これ、仕事なんだよね」
「どういう仕事だよ。なんでオイラをつれてきたんだよ」
 昼飯おごってもらえるからいいけど、と呟く彼に、彼女は笑う。笑って、今自分が請け負っている仕事の内容を口にしだした。
「あのね」
 いわく、こうだ。
 ホームページを彩るトップ画像。それの材料になる、フォトジェニックな写真を撮ってきてほしい。と、頼まれたのだ。
 女性向けのポップなホームページを作りたい、とクライアントが言ってきたので、こうして数種類の「女子受け」しそうな写真を撮り貯めているところなのである。
 そして何故テルテルボーイを連れているかと言うと。

「仕事終わりにテルテルくんと遊ぼうかと思って」

 女子受けしそうな店に連れ出されるほうの身にもなってみろよ、と呆れた様子でテルテルボーイが彼女に愚痴をこぼす。その手には電球を模した入れ物に入ったトロピカルなジュースが握られていた。
「オイラこういうの似合わねーってのに」
「違和感なく馴染んでるけど」
「オイラは男なの! こういう趣味はねえんだよ!」
「はい、チーズ」
「ピース……じゃなくて! オイラもう飽きた、帰りてえ」
 ならば今日のところはここで終わりにしようか。彼女はテルテルボーイがジュースを飲み干すのを待つと、今度は古着屋やカラオケショップが並ぶ通りのほうに向かって歩いていくのだった。
「テルテルくん、夕ご飯どうする?」
「まだ何にも決めてねえや」
「じゃあ夕飯もおごってあげよう。それまでぶらぶらっとウィンドウショッピングでもしようか」
「せっかくの休日だしなぁ、そうするか」
 あ、小鳥の群れ。と写真をかしゃり。それにテルテルボーイがじとりとした目つきになる。まだやってらぁ、と言われて彼女は思わず苦笑した。

「カメラつき携帯がいいならオイラ首から一眼レフ提げてようか?」

「ごめんって。もう仕事終わったから」