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- ナノ -
イナゴ狼
 狼の耳、尻尾。
 イナゴの羽、複眼。
 そんな中途半端な姿で生まれた彼女は、間違いなくアバドンとフェンリルの間の子だった。
 どうやって生まれたのか、朧げな記憶をたどってみる。たしか、デビル同士を合体させる装置の誤作動か何かだった気がする。
 青白い肌。両親に似て引き締まった体。狼とイナゴの間の子だけあって、脚力が凄まじかった。
「これはこれで……デビルチルドレンでござるかな?」
「デビルチルドレンじゃなくて、デビルのチルドレンじゃない?」
「略してデビチル」
「略さないでよ」
 二人が彼女を見て好き勝手な感想を送るのに、彼女は小さく息をついた。
 生まれながらにして中学生かそこらの外見をしている彼女は、相応の精神年齢だったのだ。
「お父さん、お母さん、これからどうするの、私なんて生まれちゃって」
 尋ねてみると、両親は慌てたように彼女の肩を掴んだ。そして言った。
「お父さんじゃなくて父上って言ってほしいでござるよ!」
「お母さんじゃなくてママって言ってちょうだい!」
 そこかい。
 新たなデビルが生まれた事に関するこれからの方針とか、無視かい。
 和洋入り乱れた両親からの要望に彼女は苦笑いをこぼし、二人を見上げて口を開いた。
「父上と、ママね」
 それで、これからどうするの?
 聞いてみたが、二人は楽しそうに手なんか繋いで、父上だって、ママだって、と言い合っているので仕方がなかった。
 ゆるい家族もいたものだ。