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弟子はかわいいもの
「久しぶりだね、弟子よ」
「げ……」
 荒涼とした岩肌が目立つ地に、一人の小柄な影があった。引きつった表情のアバドンよりもだいぶ小さな誰かは、にこやかに足を進めて近づいてくる。
 外見年齢、十歳。
 実年齢、数千歳。
 彼女はいわゆる、アバドンの師匠というやつである。
 うん十年……いや、うん百年前だったか。彼に忍びとしての心得を授けたデビルだった。それから今までまったく会っていないので、忍者としての実力はアバドンの独力といっても過言ではないが。
「げ、とはご挨拶だ」
「いやいや……その……お師匠様ご機嫌麗しゅう……見た目が全っ然変わりませんな」
「お前は逞しくなったね」
 見た目は父親と娘のようだが、どちらかといえば彼女が親でアバドンが子の立場である。師匠の前に正座したアバドンに、彼女はころころと鈴を転がしたような声で笑った。
「楽しんでいるかい?」
「そりゃもう」
「それは良かった。人生……いや、悪魔生を満喫できるよう、あの手この手を教育したからね」
 彼女はそこで、アバドンの背後を見た。
 アバドンも彼女の視線につられて振り向いた。
 真っ白な狼が、怪訝そうにこちらを見ていたのだった。
「良い人か?」
「良いひ……あ、いや、まあ」
「弟子に良い人ができるというのは嬉しいことだよ」
 誰よあんた、と白い狼が問う。彼女はニコリと笑って小さく手を振るだけだ。
 そうして風とともにふわりと消える。
「運が良ければまた会おう」
 気ままな彼女はそうとだけ言い残し、かわいい弟子を白い狼の元へ残すのだった。
「……何? あの子」
「拙者の……お師匠様」
「嘘ぉ!?」
「本当ぉ!」


謎の不老長寿と、弟子の忍者の話。なんて。