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ゲリラ豪雨
 ドカン、という大きな音の後、一気に雨が降り注いできた。彼女は自宅の窓から外を覗き、ガラガラ、ドン、と落ちる雷に身を竦ませる。
 窓際に飾られたてるてる坊主が所在なさげに揺れていた。
 リビングのソファでは毛布を被ったテルテルボーイが震えている。雷も雨も彼の天敵だ。
「屋内だから大丈夫だよ」
 彼女が声をかけるも効果は薄かった。
 毛布を深く被り直したテルテルボーイはうずくまって、ソファに身を沈めている。
 隣に座って彼の大きな手に触れた。人肌の温度に安らぎを覚えたのか、携帯電話の彼は彼女の手を握り返し、一言「そばにいてくれねぇか」と弱々しく告げた。
 大きく頷いて、力強く手を両手で包み込み、体を寄せ合おうとしたその時。

 ドカン、ガラガラ!

「わあぁーーっ!!」
 雷鳴に悲鳴を返したテルテルボーイは思わず毛布を放り投げ、ソファから転げ落ちたのだった。
 彼女と手を繋いだまま。
「うわあ!」
 テルテルボーイの上に落ちた彼女の手が短縮ボタンを押す。今日の天気は曇りのち晴れ。ゲリラ豪雨の事など一切触れない能天気な予報に繋がった電話。
 それに、嘘つけ! と怒り半分で叫んだテルテルボーイが、彼女を抱きしめながら天井を仰いだ。
「早く雨やめぇーっ!」
 てるてる坊主がもう一つくらい、必要なようである。