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ヤシガニとウデムシ
「なんならぁ?」
 四本腕の兵士がだらだらと携帯ゲーム機で遊んでいるのに、兄であるヤシガニが苛立ったような声を出した。
 何をしている、というような声かけだったのだろう。父親そっくりな口調で弟兼妹に話しかける彼を見て、他の兵士たちがすわ喧嘩かと身構えていた。
 しかし話しかけられている当の本人であるウデムシは、全く反応を示さない。携帯ゲーム機を弄りながらコーヒーを飲んでいる。
「おどれ、聞いちょるんか、こら」
「あぁーーー? てか、それって俺に言ってんの?」
「おどれ以外に誰がいるんなら」
「一々巻き舌になんのやめてくんねぇ?」
 心の性別が両性具有だったとかいう理由で女性だった体を両性具有にしてしまったウデムシは、生まれつき四本ある腕を気だるげに振って、ヤシガニの兄にだらっとした返事をしていた。
 なんともだらけた口調。だらけた空気。忍者工作兵という謎の肩書きを持ったウデムシが視線だけを兄によこし、口を開く。
「見て分かんでしょ?」
「あ?」
「なんなら、っつってたじゃん。何しよんなら、って意味だったんじゃん? ゲームしてんの。見て分かんない?」
 仕事はどうしたと兄が問うのに、弟兼妹は鼻で笑うようにして口角を少しだけ上げた。
「だりぃ」
「感心せんのう……お勤めは果たさにゃならんけぇのぉ」
「締め切りまでにはやるし、いいっしょ、それで」
 四本の腕で携帯ゲーム機を二つ持ち始めた弟と妹が合体したウデムシは、そういうと通信対戦を始める始末だった。
 兄は呆れたように肩を竦める。
 書類の整理は兄も苦手だ。暴れているほうが性に合っている。だから文句は言えない。
「忍者っちゅうんは皆こうなんかのぉ?」
「さぁてねぇ」
 だらけた返事が返るのに、ヤシガニはため息を一つついて背を向けた。