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高低差の慰め
「なんやねんな」
 低い声で弟の方を向く大柄な「姉」は、不機嫌そうだった。
 対する弟は、わはは、と高音で笑う。ぐいぐいと姉を足で押しのけながら、それでも姉にどこかに行って欲しくないのか彼女の袖を掴んでいた。
「ええ加減にせえよお前ほんまに」
「お姉やん暇なんねやろ? 僕と遊ぼうや」
「遊ぼう言う態度ちゃうやろこれ」
 低音の声と高音の声が混じり合う。ぐいぐいと足で押しのけられ、それでもどこかに行く事を許されない姉は、なんとなく弟を見て察した。
 これはきっと八つ当たりだ。
 ムササビかカエルかは分からないが、親と喧嘩したのだ。たぶん。
 だから八つ当たりしても怒らない相手でストレスを発散しているのだろう。
「サンショウウオって焼いて食ったらどないな味やの?」
「いてもうたんぞお前。ワシはオオサンショウウオや」
「わはは!」
 いてもうたんぞ、と言っても、本当にいてもうたる事はない姉は、甲高い声で笑う弟の頭を乱暴にワシャワシャと撫でくりまわした。
 ワライカワセミの弟はより一層高い声で笑い、姉の服をしっかり掴んで離さなかった。