×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
三日月の子
「チルドレンではないなぁ」
 アバドンに出会って開口一番そういわれ、彼女は苦笑した。
「確かに、子供ではないです」
 彼女はザントマンのデビゲノムを持ったデビルチルドレンである。
 ザントマン。子供たちに眠りの効果を持った砂をかけて眠らせる役目を持ったデビル。
 三日月状の顔を持つ、ナイトキャップを被った男だ。
 彼女は十九歳。ぎりぎり未成年ではあるが、子供と呼べる範疇にはいない。
 ザントマンの隣で笑っている彼女はアバドンを見て言う。
「デビルの血筋を継いでいるんで、チルドレンでも構わないんじゃないですかね」
 髪の色は明るい。腰に下げた小さな袋の中には、眠りに落ちる砂が入っている。ザントマンの影響を多分に受けた彼女は、ザントマン一族の子といって差し支えなかった。
「して、何故こちらについた?」
「楽しそうだったんで」
「あらら……楽しそうってお主ね……拙者たち、一応世界制服しようとしているわけで」
「いいじゃないですか、世界制服。悪いことだと思ってないんでしょ?」
「そりゃあ、ルシファー様の望まれる世界になればいいなとは思ってるでござるけど」
 彼女の周囲を目玉がふわりと浮遊していた。ザントマンが片手に持っている目玉だ。それが彼女にも現れた。
 マカイ生活の中で、どんどんザントマンに馴染んでいる証拠であり、彼女が人間離れしていっている証拠でもあり……アバドンは、彼女のことを「扱いにくい」と思っていた。
 もっと軟弱な人間であれば、もっと意志薄弱な人間であれば、いいように言いくるめて言うなりにもできたのに、と。
「まあ、利用させてもらうでござるよ」
「はい、ルシファーさんがどんな政治でマカイを治めるのか、見てみたいです」
 彼女は動く。
 全てはザントマン一族のため。