×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
わるチル
 逃げる。走る。全速力で。
 隣にはアバドン、その隣にはフェンリル。
 消えればいいのだが、消えられる余裕がない。
「デビチルッ! デビッ! チルッ! 強っ!」
 弾んだ息遣いのまま喋れば、知ってる! と二人から返ってくる。彼女は半笑いで敗走していた。彼女もデビルチルドレンである。
 パートナーはアバドン。
 というのも、彼女はアバドンの支配下にあるイナゴの遺伝子を多分に含んでいるのだ。つまり彼女はアバドンの遺伝子ではなくイナゴの遺伝子を持った、生まれながらにしてアバドンの配下といえる存在なのである。
 イナゴといっても人間界にいるイナゴではない。マカイの、常識を超越した描写をされているイナゴのほうだ。
「本当は! アバドンさんの、手下が、パートナーなんですけどね! なんで! こんなに! こき使われてるんだか!」
「手下のパートナーはすなわち手下! こき使って何が悪い!」
 走りながら会話ができるあたり体力馬鹿なのは両者同じらしい。
「いいから早く消えましょうよ、アタシ疲れちゃった」
 走ることは得意中の得意である狼……フェンリルが呆れたように二人についてくる。 イナゴの遺伝子が入っているだけあって、彼女の足は速い。アバドンとフェンリルと併走できるあたり、強靭な足腰を持っている。
「それじゃあ!」
「せえので!」
「消える!」
 三人揃って声をあげれば、時空が歪んで姿が消えた。
 悪役というのも大変なお仕事である。