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- ナノ -
いつかの北風
 冷たい風が吹く。彼女は冷えた手を揉みながら建物の中を覗き込んでいた。
 鉄仮面の彼が出てくる。彼女よりもだいぶ大きな鉄仮面の大男に、彼女はやんわり微笑むだけだ。
「中で待ってりゃいいじゃねえか」
「関係者以外立ち入り禁止でしょう」
「俺の関係者じゃねえか」
「ふふ、私は一ファンだから」
 冷たい風が吹く。身を竦ませて寒さから身を守る彼女は、建物から出てきたケビンマスクと共に歩き出した。
「どこにいく?」
 彼女が尋ねる。
「お前の行きたい所でいいぜ」
 素っ気なく返ってくる。
 なので彼女はやんわり微笑んで、なら、と行き先を告げるのだった。
「美波里公園に行こう。万太郎くんたちの応援に」
「どうせあいつらトレーニングなんかしてねえぞ」
「ケビンが相手になってあげたら?」
「まあ、たまにはいいか」
 冷たい風が吹く。ケビンのコートの中に入れられた彼女は寒さを感じる事はない。
 冷えた指先を揉むようにこすり合わせる彼女を見て、鉄仮面の彼は彼女の手を取った。
 指を温めるために、ぎゅ、と握る。
「優しいね」
 彼女が言うと
「ファンサービスだ」
 やはり素っ気なく返ってきた。