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電波的
 兄の仇、と言われて万太郎は戸惑った。
 見知らぬ女性が万太郎を探し当て、いた、と一言声をあげたのだった。
「ええと、お人形みたいなお姉さんは、誰?」
 お人形みたいなお姉さん。そう呼ばれた彼女は万太郎を指差して言う。
「私は兄の妹よ。よくも兄を漏電させてくれたわね」
 球体関節の彼女は、ヘッドホンとそれに付属したマイクを使って話す。背中からはコンセントプラグが尻尾のように伸びていて、衣装は黒いチャイナ服だ。
「兄の妹って……それに、漏電?」
「あの時武道館で雨に濡らしたじゃない」
「……まさか……」
 ヘッドホンから伸びたアンテナを見て、万太郎は青ざめた。この真っ黒具合といい、機械的な外見といい……彼女はもしや。
「て……テルテルボーイの?」
「やっと思い出したのね! そう、兄が世話になったわ!」
 肩まで伸ばしたストレートの黒髪が、風に吹かれてさらりと揺れた。
「それにしても、あなた……」
「は、はい」
「結構チャーミングね……倒すのが忍びないわ」
「は、はい?」
 彼女は難しそうな表情で万太郎を見つめている。悔しいが、好みの顔なのだろう。
 ぐぬ、と声を殺して呻いた彼女が、万太郎から視線をふと逸らす。
「お、お友達からで」
「敵同士よ!」
 万太郎の場を選ばないナンパに突っ込み、彼女は叫んだ。
 それは万太郎に負けた兄への恨み節にも聞こえた。
「なんで、敵がこんな男前なのよぉ!」