コピー&コピー
新進気鋭のコピー超人!
なつかしの超人に化ける姿がファンの魂に火をつける!
雑誌でもてはやされる彼の姿を見て、テルテルボーイは面白くなさそうに舌打ちを一つこぼした。コピー超人としてならテルテルボーイの方が先輩なのである。
狸の覆面を被り、素顔は一切分からない。耳や尻尾は自前のものらしいが、露出の低いコスチュームのせいでそれが本当かどうかも分からない。
化け狸超人と呼ばれる彼が、目の前でドーナツをもぐついている事が気に食わない。
「オイラの方が器用だっつうの」
「むぐむぐ」
「大体、お前の正体は……」
「言わないで、どこにパパラッチがいるか分からないでしょう」
雑誌の中では、狸の耳と尻尾をつけた先代の超人たちが暴れる写真が複数のっていたし、実際に出会うまでテルテルボーイもすっかりそうだと思っていた。思い込んで、ライバル視して、勝手に落ち込んでいた。
出会ってみたら驚きだ。
狸の超人は、女だった。
雑誌でもてはやされる「彼」は、実は「彼女」だったのだ。
つまり、一度オス狸に化けてから他の超人に化けている、という二重構造だったわけである。
男に化けなければ超人プロレスの舞台に上がりにくいのは分かるが、初めまして、と顔を合わせるときに変化を解いてきたのはどういう神経なのだと今でも信じられない思いでいっぱいだ。
「どうせ隠すなら徹底して隠せよな」
呆れたような目つきで彼女を見るテルテルボーイに、彼女は首を横に振った。とんでもない、と慌てた様子で。
「だってテルテルボーイと当たったら、私の身辺調査されてどうせバレちゃうでしょう? 自分から明かしておくほうが傷は浅いんだよね」
「しっかりしてらっしゃる」
この秘密を知っているのは、今のところテルテルボーイただ一人らしい。
当たりたくねえな、と何となく彼は思った。
叩きのめすのが可哀想なのか、こうして一緒に食事するほど気が合うからなのかは、分からないが。