肉体言語
ぽたぽたと鼻血が垂れる。顔には痣ができていて、左足が腫れていた。
擦り傷が数え切れないほどあり、まぶたも青く変色している。
それでも彼女は倒れずに立ち続けていた。
敵意を目に宿して、負けてなるものかと立ち続けていた。
「お前も馬鹿な奴ダァ……」
ダイノボットは彼女を見て鼻を鳴らす。馬鹿にしているわけではない。寧ろ好んでいるのだ。
彼女は力ずくである。彼女はストレートである。彼女に打算はない。
それがダイノボットの好意的な笑みを引き出していた。
「俺とタイマンで勝負して、負けたらいう事を聞くってか? ただの女が言うじゃねえかよ、ああん?」
彼女は何も言わない。
デストロンに保護(?)されている彼女をサイバトロンが保護し返そうとしたとき、彼女がそういってファイティングポーズをとったことを、弁明しない。
よほどデストロンが気に入っているのか。それともサイバトロンが嫌いなのか。
勝ち目がない勝負にラットルやライノックスからは中止するよう何度も言われたが、それに対しても彼女は何も言わなかった。
何度も打ちのめされる。
ダイノボットが彼女の頭を掴んで立たせようとするのをコンボイが止める。
舌打ちと共にダイノボットが手を離す。
その一瞬の隙をついて彼女はダイノボットのこめかみに拳を打ちつけた。
そして叩き伏せられる。
今度こそ終わりだとコンボイが止めようとする。
しかし彼女は何も言わず立ち上がり、ダイノボットに蹴りを繰り出した。
何度も。何度も。何度も。
負けているのに。勝てないのに。勝負を諦めず、彼女はファイティングポーズをとり続ける。
ダイノボットの舌打ちが響いた。
「お前、俺と勝負したかっただけじゃねえか! 延々と、延々と!」
呆れたように言うダイノボットに彼女はようやく笑う。そして、しゃがれた声で一言だけ返した。更に周囲が呆れるのが見えて、彼女はくくと笑った。
「デストロンにい続ければダイノボットと喧嘩し続けられるでしょう」