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双子ネタ
「あんたはまともなのにねぇ?」
 ため息混じりでブラックウィドーに言われ、メガネをかけていない方のタランスが片眉を上げた。
 コンタクトレンズを入れていて、人付き合いは苦手だが美容院で髪をセットし、流行りの服を着て、最低限肌のケアをしている方のタランスが。
 タランスはそんな真似をしない。ここまで言えば分かるだろうが、別人だ。
 一卵性の双子である。彼は弟の方だった。
 彼はカフェでレギュラーサイズのカプチーノとチーズケーキをおやつにしながら、目の前でキャラメルマキアートをちびちび飲むブラックウィドーを見る。
「そうでもないんじゃない?」
 あっさり返してチーズケーキを一口。そんな彼にブラックウィドーは首を横に振る。
「あんたらさぁ、一卵性の癖して見分けがつくし、声は似てるけどあんたの方が低いし、どっちもコミュ障だけどあんたは愛想笑いできるし、とにかく似てないわよ?」
「タランスのが頭いいし、タランスのが稼ぎもいいしね」
「あんたの方が並んで歩いても恥ずかしくないッシャ」
「辛辣ぅー」
 彼が苦笑いしてカプチーノを飲み干すと、ブラックウィドーもキャラメルマキアートを一気に飲んだ。
 二口、三口でチーズケーキを頬張り、返却カウンターにトレイごと返す。
 そして彼はブラックウィドーの方を振り返り、咳払いを一つした。
「弟になりすますの大変だったッスよ、ウヒヒ」
「タランスのつもり? 声は似てるけど、やっぱあんた、似てないわ」
「ダメか。ブラックウィドーは、もしタランスが僕みたいな見た目してたらどう思った?」
「似合わないって思うわね。いくら双子でも、あんたに合うものがあいつに合うとは限らないでしょ」
 同じ格好をしていれば親でもたまに間違えるくらいだというのに、ブラックウィドーは一度たりとも間違えたことがない。
 今日も寝起きで見た目がほぼ一緒だったところを見分けられて、買い物に付き合わされているくらいだ。
「ブラックウィドーはヒヨコの鑑定士向いてると思う」
「冗談でしょ。幼馴染だから分かるだけよ」
 ブラックウィドーは必ず彼を見つけ出す。
 ブラックウィドーは必ず彼をそばに置く。
 なんだか意識されているようでむず痒い。
 そんな考えを押しとどめて、彼はブラックウィドーの荷物持ちとして今日も繁華街を歩くのだ。