学パロ
「お兄、邪魔」
「ひどいッスねぇ……チミのためにしてあげてるのに」
余計なお世話だ。
彼女は兄に告白の邪魔をされている。
好きだったダイノボット先輩に告白しようと学校の裏へ呼び出したのだが、そこに何故か兄であるタランスまでやってきて、こうして彼女を足止めしているのだ。
ダイノボットといえば喧嘩っ早く、どこかの暴走族を相手にステゴロで勝負を挑んだという武勇伝を持つ。そんな彼に近づけさせたくないというのは兄心なのだろうか。
「どいて。先輩、帰っちゃうじゃない」
兄を押しのけてダイノボット先輩の元まで走っていく。此方に気づいた彼が、彼女の背後を見て眉間にしわを寄せていた。大方タランスが手でも振っていたのだろう。
「あの、先輩!」
「……兄貴のお礼参りか?」
「え?」
お礼参りという言葉の意味が分からない。ぽかんとしていると、何だ違うのか、と返ってくる。不思議そうな彼女に、ダイノボットはばつが悪そうにそっぽを向いた。
こめかみに貼られたガーゼが真新しい傷を強調している。
「タランスの妹だからよぉ、てっきりお前も族なのかと思ってたぜぇ」
「ぞ、ぞく、ですか?」
「違うみてえだな」
彼女は思わず振り返った。
物陰から此方を見ている兄を見つけて、どういうことだと睨みつける。
すると、タランスはため息混じりに出てきて、こういうのだ。
「知らないほうがチミのためだったダショ?」
先日ダイノボット先輩とステゴロで対決した暴走族というのは、兄のことだったらしい。
「もちろん、お兄をボコボコにしたんですよね、先輩?」
「ったりめぇだ、あんなヒョロいのに負けっかよ」
「さすが先輩、格好いいです!」
「お兄ちゃんの扱い雑ッスねぇ、妹ちゃん……」