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アンチヒーロー2
 まさか色ガラスを砕いて贋作を作るとは。
 次兄の贋作技術に目をむいたのは、美術館をこっそり警備していた警部だった。
 長兄と次兄が持ち去った絵画が車に積まれる。その瞬間を偶然目撃できたメガトロン警部が、今こうして守っている絵画を見つめなおしたことで事件は発覚した。
 よくできているが、やはりガラスでできているだけあって、本物よりも若干粒子が粗い。さては短時間で作ったな、と相手の性格を予想して、警部は車を出した。
 勿論三兄弟を追いかけるためである。

「タランス……やはり作りが雑だったようだが?」
「あらぁ……でも上手なほうダショ? 気づいたのはあの警部さん一人だけッスから」
「逃げ切るなら、私、協力するけど」
「頼んだ、我らが弟よ」
 弟、と呼ばれ、妹は肩をすくめる。男装している今、そう呼ばれるほうが自然なのだろうとは思うが……。
 車の窓を開けた。
 いわゆる箱乗りになった彼女が、拳銃を構えて警部の車を狙う。
 破裂音が一発。
 警部の車が右に左に大きく揺れ、ついには走れなくなる。
 前輪を狙い撃ったのだ。
「くそっ! まぁたやってくれたな! このスットコドッコイブラザーズめ!」
「妙に語呂がいいのがムカつくッス」
「構うにゃ、末弟、車のにゃかに戻っておいで」
「了解」
 するりと車の中に入る彼女。直後に窓を操作して閉める長兄。二人のコンビネーションをよそに、次兄が振り向いて警部の車をじっと見ていた。
「アタチあいつ嫌いダス」
「一度捕まりかけたもんにゃ?」
「追い詰められてね?」
「二人ともうるさいッス」
 これから三人は国境を越える。地続きになっている隣の国に渡り、仮のアジトにしている廃墟で今回の成果を確認し、裏ルートで「元の持ち主」に返却するという任務がある。
 勿論違法である。だからこそ逃げている。

「義賊か? 少年Aと仲間二人、美術館に現る」

 そんなニュースが新聞の一面を騒がせるのは、もう少し先のこと。