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- ナノ -
イナゴ狼それと弟子
 腹筋百回、腕立て伏せ百回、背筋百回。それが終わったら昼食の用意をし、昼食が終わったら食器を洗う。
 そして再び腹筋百回。正直きつい。師匠よりもスパルタだ。
「さっさとやんなさいよ」
 吐き捨てるように言われた言葉は冷たい。つま先でツンと蹴られ、食器を洗っていた彼女は冷や汗を流しながら師匠の連れを見る。
 真っ白な狼は、何故だか彼女を目の敵にしているようだった。
「師匠だったら私の体力を考慮した修行プランで済ませて下さるのに……」
「何よ、あたしに文句あるっていうの? いっつもいっつもベタベタベタベタくっついちゃって、邪魔くさいのよアンタ……」
 フェンリルは何やら勘違いをしているらしい。彼女は小さく息を吐いた。困ったように白い狼を見て、言葉を紡ぐ。

「義父上(ちちうえ)の伴侶どのに文句などはございませんが……そんなにベタベタとしておりましたでしょうか?」

 師弟の仲を勘ぐっていただろう狼の耳がピクリと反応する。義理の親子だと知らなかったらしい焼きもち焼きの真っ白な耳が、徐々に桃色に染まっていく。
 その上、義父上の伴侶、と呼ばれた気恥ずかしさで目が一瞬泳いでいた。忍者の弟子である彼女にしか見抜けない些細な変化だったが。
「ちゃんと修行しておるか? って……何? なんでござる?」
 タイミング悪くやって来た師匠を見て感情が高ぶりきったらしい。
「何でもないわよ!!」
 裏返った叫びをあげた嫉妬心の塊が、アバドンに強烈な平手打ちをかまして走り去るのを、彼女は驚きながら見送るしかできなかった。
「いったぁ……! な、何を話していたのでござるよお主ら?」
「し、少々、認識の行き違いがあったようでして……」
「はい?」