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海の忍者は青い春を見た
 太刀を背中に背負い、全身をうねうね動く無数の足で守る、タコのトランスフォーマーがいた。彼女はサイバトロンではない。だがデストロンガーでもなかった。
 誰の味方かと問われると、彼女は言った。
「私は私の味方である」
 誰の敵かと問われると、彼女は言った。
「私の敵は私である」
 意味が分からない。しかし、それでよかった。
 剣の腕を磨くため地球へと武者修行にやってきた彼女は、タコという生命体の姿を借り、無差別に、それでいて自分より強い者にばかり襲い掛かるのだから。
 昨日の自分を越えるため、明日の自分に追いつくため。
「だからといって喧嘩を売っていい相手と悪い相手がおろう」
 尻尾の剣を振り回したムササビが彼女の太刀を叩き落す。
 伸縮自在なタコ足でもってムササビの尻尾を掴み、地面にたたきつけると、ムササビは面倒そうに舌打ちをした後、ビーストモードのまま四足で突っ込んできた。
 かわせない。
 足で守るしかない。
 ムササビがにやりと笑う。

 噛み千切られた足が宙を舞った。

 力強く倒された彼女の体が地面を転がった。
「拙者の勝ちぃ……」
「……確かに」
「ゲルシャークに挑もうなど百万年早いぞ、小娘」
 勝ち誇ったように彼女の上に乗っかるギルドーは、偉そうにゲルシャークの名を口にした。彼女が最初に指名した相手の名を。
 させるか、という低い声で乱入してきたのがギルドーなのだ。目が据わった彼は容赦がなかった。思わぬ伏兵だとギルドーを見るが、伏兵だと判断したのが失礼なのである。
「……貴殿にとってゲルシャーク殿は何なのだ」
 地面から起こされながら彼女が尋ねると、ギルドーの表情がやや曇った。
「腐れ縁でござる」
 若干気まずそうに呟くのは、すぐ傍にゲルシャークがいるからか。
 それとも、その言葉が建前だからか。
「好きか」
 淡々と尋ねた彼女の顔を、ムササビが力任せに殴った。