青い海
波間を漂うクラゲが一匹。
ただし巨大である。
大きさ、約3メートル。エチゼンクラゲもびっくりな大きさの、カツオノエボシだ。海洋調査隊が目の色を変えて捕まえたくなる大きさである。
彼女は触手に何が触れても、決して針を出さない。ただ波に漂うだけだ。
「ソナーを発進、敵らしきものは見当たりません」
「うむ、ご苦労」
彼女の仕事は通信兵。自身をアンテナ代わりに電波を四方八方へ送り、情報を収集するのが役目だった。
隣にサメの提督がいるが、彼は別に何をしてくれるわけでもない。ただ隣にいるだけだ。
途中、疲れていないかだの、茶を入れようかだの、気遣ってはくれるけれど。
「いつもすまんな」
しゃがれた優しい声で彼が言った。
彼女がゆっくり人型になり、ゆっくり首を振る。
「あなたの為ですから」
その一言にゲルシャークは顔を赤らめ、そっぽを向いてしまうのだから、なんともいい人であるし照れ屋でもあるのだろう。
クラゲとクラゲが好きあってる。
グッシャーにそうからかわれ、ゲルシャークの拳骨が飛んだのは直後のこと。