小豆色のお師匠さん
「師匠は苦手な方とかいらっしゃるので?」
元盗賊の彼女がなんとはなしに呟いた。
焚き火を囲んで焼き魚を頬張っていた大きな忍者が、怪訝そうに彼女を見る。そして口の中の魚を飲み下すと、一言告げた。
「弱点をほいほい教えると思っているのでござるか」
「いや、思ってませんけど……いるかいないかだけでも」
「いる」
「即答」
だがやはり名前は教えてくれない。
それもそうか、と一人で納得した彼女は残った小さな魚を頬張った。
アバドンが苦手とする相手は。
弱点があるのかと何の気なしに尋ねてくる、彼女そのもの。
言わなくていいことは言わないのが師匠流である。