頬袋はモチモチしている
「まったく、家を出てから連絡の一つもよこさないなんて……」
群青色のアオサギがぶつぶつ文句を並べ立てる。文句というよりは説教かもしれない。
対して叱られている青いムササビは目に涙を浮かべていた。
先ほどからアオサギに頬をつねられているからである。
ロボットモードのアオサギが、久しぶりに会ったビーストモードの弟の頬を、思いきりぎりりと捻じっているのだ。
「便りがないのは元気な証拠という諺があるではござらぬか……姉者痛い、姉者」
反論を試みるも頬っぺたから手が離されることはなく、更にむにゅ、と摘まみ上げられ、ギルドーは困り果てた。
家にいた頃からこの姉はどうにも厳しかったが、こうもしつこく体罰を加えてくるような存在ではなかった筈だ。
それほどまでに心配をかけていたのだろうか。
しかし隠密や諜報員が多い我が家系でこうまで叱られるとは、心配性にも程があるのではなかろうか。
それにしても頬が痛い。伸びきってしまいそうだ。
アオサギの手が、ムササビの頬をもう一度むにゅ、と摘まんだ。その手つきに違和感を覚えた弟が恐る恐る姉を見上げる。そして苦い顔をした。
「姉者……何をうっとりなさっているのでござるか?」
「ギルドー……あなた……」
「……はい……というか痛いです姉者」
「あなた……ムササビをスキャンしただけあって、頬がふっくらもちもちね……!」
そんな理由で頬が痛くてたまるか!