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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -
化け物族とでも呼ぼうか
 自分のことを人間だと無条件で信じ込んでいる人々は、自分が人間である根拠が何一つない事に気づいていない。
 妖怪が存在して、幽霊が存在して、人間ではない動物が存在しているから自分は人間だと主張する人々は、全ての存在と照らし合わせたから自分は人間だという主張がとてつもなく弱いことを分かっていない。
 自分が何者であるのか。
 自分が何者でないのか。
 全く無自覚に。無根拠に。引っ掻き回して得意面だ。上っ面だけを吹聴してまわる。それが正しいと信じてやまない。
 そのことを気づかせたくてたまらない私は……こうして空想や妄想の類を空想や妄想である保障がないと言って歩く私は、まるで安っぽい御伽噺のトリックスターじゃないか。
「ねえ、私が妖怪じゃない保証は何処にあるのかな? 私が化け物ではない根拠は何処にあるのかな? あなたは知っていますか?」
 幽霊族の最後の一人に声をかけた。
 幽霊族の最後の一人は女を見た。
 答えが欲しいのか、それとも根拠が欲しいのか、どちらかは分からないが、まっすぐ見てくる女を。
「まるで化け物でいたいみたいな言い方じゃないですか」
「そうかも知れないけれどその根拠すら今の私にはないのよ」
「まるで人間をやめたいみたいな言い方じゃないですか」
「そうじゃないかも知れないけれどその保障も今の私にはないのよ」
「僕にだってありませんよ。あなたは人間かも知れない。人間じゃないかも知れない。第一、人間だなんて言葉は人間が勝手に作り出したものですからね」
「そう、ただの自称に過ぎない。かつては幽霊族こそが人間であったのと同じ。人間が人間でい続けられる保障などもはや何処にも」
 そこで鬼太郎は女の口を掌で塞いだ。
 瞳の奥をじっと見て、そして静かに言う。
「次の“人類”は、何族なんでしょうね?」
 女は口を塞がれていたので、ただ、目だけで笑った。
 自分が妖怪と呼ばれる未来が必ず来ることを覚悟した上で。
 今日か明日か。
 どこかからふらりと新たな人類が地球を占領しに来ることを知った上で。