こうして,この少年が真実を語るまでの俺達と少年の奇妙な同居生活が始まった。

毎日非番が少年を見張り,他のメンバーの任務には事件の情報収集に的が絞られた。

当初のリゾットやプロシュートはスタンドを使ってまで,吐かせようとしていたが,俺の反対でどうにか少年がこれ以上傷付くのを防ぐ事ができた。

しかし,依然として少年の口から真実が語られる事は無く,会話すらろくにできない状態の日が一週間以上続いていたある日の事だった。

その時はたまたま俺が非番で,たまたま夕食のパスタが切れていた,そんな日だった。

『ぉいおい…なんもねーなあ…。しょうがねぇ…買い物にでも行くか…』

足の着かない椅子に座って,おやつに与えたパンのかすが乗った皿をぼんやり眺めている少年に向かって俺は話しかけた。

『お前も買い物,ついてきてくんねぇか?…外出るの久しぶりなんだろ??こんな日があってもいいじゃねぇか…,な?』

無断で少年を外に連れ出したなんて事がリゾットにバレたら,今回こそただでは済まない様な気がしたが,その時の俺は本当に何も…何も考えて無かった。

『とりあえず,手ぇ繋ぐけど…大丈夫か?』

俺達は玄関を出ると,逃げられないように少しきつめに手を繋いだ。

狭い路地から広場を抜けて,店が軒を連ねる賑やかなアベニュ-に差し掛かった時,心無しか少年が目を細めている事に気付いた。

アベニュ-はどこもナターレのイルミネーションで彩れ,大勢の人々が七面鳥やらケーキやら山積みのプレゼントを抱えては皆幸せそうな顔をして家路を急いでいる。

『…ナターレか…』

ちらほら,路地の片隅で熱い抱擁やキスをしている男女がいたが,ナターレは家族で過ごす大切な日だ。俺達みたいに闇の世界で暮らす人間を除いて。

俺達はいつもの店で一番安いパスタを買い,肉屋のオヤジに必死こいて値引いたローストチキンを紙に包んで貰い,ついでに乾物屋で足りない調味料を買った。店を出ると日は既に落ち,綿のような美しい雪が舞っていた。

『首が寒いだろ?…ほら。マフラー買ってやれるまで俺の使ってくれねぇか?』

俺は自分の赤いマフラーを外すと,リゾットの爪痕が紅く残った少年の白い首に巻き付けた。

『さあ,帰ろうぜ』

俺は再び少年の手を握って来た道を戻ろうとした,…その時だった。






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