…ガチャ…ギギギ…

12時をとうに過ぎた頃,ガタのきたアジトの玄関扉を開く音が聞こえた。プロシュートはワイングラスに口を付けたまま,壁時計を一瞥する。左手に挟んだ3本目のシガレットは既に短く燻っていた。

『…遅かったな…こんな時間から急な任務か?』

『ああ…何も知らせずに…すまなかった。』

リビングに足を踏み入れた大男はそう手短に謝ると,真黒の上着の裾をめくり上げた。

『…何の土産だ?』

リゾットの影には,小さな子供が佇んでいた。

『…ポルポからだ。こいつの世話を任せられた。…宜しく頼む。』

そんな急な展開に俺はとんでもねぇと喰らいついた。

『お…おいぉぃ,どういう事だ?…こんなガキが暗殺か?…俺達はベビーシッターなんかじゃないんだぜ?リゾット,お前が一番分かってるだろ?』

プロシュートも訳が分からないと言った素振りをして見せた。

『…とにかく,これは任務だ。俺も十分に知らされていない。直接この子供から聞き出すしかないようだな…おい。』

リゾットがそう声をかけると,子供はビクッと痩せぎすの肩震わせた。長い前髪から光の失せた瞳が覗いている。

『困った…さっきからこんな調子でな…子供の扱い方はいまいち解らないのだが』

リゾットが呟やいた。
もっと優しく声かけれねぇのか?なんて,俺達にさえ笑顔をめったに見せないリゾットに言える訳が無かった。



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