すると,もう一人の男が車から出て来て激昂している男を宥め始めた。

『おい,落ち着け…いいか?今は○○を殺った奴を探すんだ。無理じゃない…見ろ。まだボンネットが暖かい…○○は俺達が駆け付ける1〜5分のうちにバラされて,奴はまだ遠くへは逃げてないはずだからな…』

男は車に慎重に近づき,死体に手をかけた。

『熊手…か。なぜ銃を使わ無かった?…並走する車からこんなに確実に熊手が突き刺せるのか?』

『○○は男に追われてると言っていたが…もしそいつが車に乗っていたのなら…この狭い一本道でUターンしたのか?俺達は対向車とは擦れ違わ無かったが…』

男は黙々と不可解な点を指摘していく。暗殺者並の鋭い洞察力だ。元警察か何かか?…鼓動が速まるのを感じた。

『…足元に血痕がある…不自然だ!…後部席に飛び散るならまだしも…』

男の足音が近づいて来た。血痕をたどってきているらしい。

『や…殺るか…』

弾創で開いた傷口を指で強く捻り潰し,足に力を込めて立ち上がった。もうスタンド能力を使える程の体力も精神力もない。見ると,男は俺のほんの数メートル先まで近づいて来ていた。

『また……また待っててくれねぇか??…すぐ戻るから…』

俺の姿を捕らえた男の瞳孔が驚きに弛緩するのが見えた。全ての時が一コマづつ流れてゆく。俺はその眉間に銃口を向けた。迷いなく,正確に引き金を引く。

『…イルーゾォ。』

今まで一度も呼ぶことの無かった子供の名前を口にする。俺は自分の口から自然に出て来たこの言葉に驚いた。

なんだよ…呼びたかったんじゃねぇか…あいつの口から直接聞くまで絶対に呼ぶものかなんて,意地に思ってたのにな…

『…ごめんなあ…イルーゾォ。…俺はお前を守る事も出来ねぇんだ…』

俺達と過ごした時間を全て忘れて,堅気の元で幸せに育ってくれるなら今ここで野垂れ死んでも構わねぇ。

男は咄嗟に銃を腰から抜いたが、それよりも早く俺の銃弾が眉間を貫通し,男は脳鞘を飛び散らしながら絶命した。

さあ…俺を殺るなら今のうちだ…弾もあと数発を残すのみになっている。それに何より腹の傷が致命的だ。

俺は車の方へとゆっくり歩き出した。車のライトに照らされて,地面に影が長く伸び,静かに揺らめいた。

『…おい。』

確かもう一人,先程まで激昂していた男がここら辺にいたはずだ。俺は息を潜めて更に車へ近づいた。

車の奥には仲間の乗った車があと一台見えるが,車内のライトはついたままで,誰も乗っていないようだった。まさか四方に隠れて狙撃してくるんじゃねぇのか…俺は暗闇に目を懲らした。






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