「あれはESPカード...透視などの実験を行うために組織の連中が開発した五枚一組で用意するカードだ。くっ、まさかあいつがそんなものを持っているとはな...!」
丁寧な解説付きで話してくれてありがとう、海藤くん。組織どうこうはわからないけれどESPカードについては聞いたことがある。
彼の言うようにESPカードは丸、十字、波、四角、星の絵柄が描かれており、超能力の実験を行うために考案された道具だ。学問で言うところの超心理学という分野だ。
私は正直超能力については半信半疑の立場だ。なぜならば実際に見たことはないし、カード当ての類はマジックなどでよく見かけるからだ。
ESPカードもマジックの一種と捉えられることもあり、メンタリズムを利用したものでタネはあると言えばある。私はその専門家でもないから詳しくは知らない。
ぼんやりと人集りを見つめていると、再び的中させたのか、その度にすげえやら歓声が聞こえて来る。
「おお、もっと近くで見てみようぜ。」
「フッその必要はない...俺もまた、選ばれし者だからな...」
海藤くんの中二病が再び発動したかと思えば、彼はおもむろに懐からカードを取り出した...これはESPカード。
高橋くんのは手書きだけれど、海藤くんが出したのは既製品のようでしっかりとした作りをしている。海藤くん、こういうのは好きそうだもんね。
「うおおっ、なんだこれ!?かっけー!」
「え?これ印刷とか本格的じゃん!いくらすんだよこれ?!」
周囲の反応に私達の机の周りに人が移動して来て、いつの間にか人集りが出来ていた。
「まったく...騒がしいな...俺は騒がしいのは苦手なんだがな..,」
奇遇だね海藤くん。私も騒がしいのは苦手だよ。だからこの人集りを早くなんとかして。
そんな私の願いも虚しく、海藤くんは楠雄くんの机にESPカードを置いて行く。どうやら彼もやるらしい。
「さてと、ただの人間にはもったいないが、俺の真のチカラを見せてやろう...」
彼の言葉に周囲はおーっ!と期待の声が上がる。しかし、私には分かっている。彼がこの状況で焦っていることが。
なぜならば顔に出ているからだ。恐らく、当てなきゃ...でも、どれがどれだかわからない!とでも思っているに違いない。
「いくぜ...このカードに描かれたマークは星だァアッ!」
意を決した海藤くんが並べられたカードから一枚を引き抜いて宙に掲げた。周囲の人達も緊張しているのかゴクリと唾を飲み下す音が聞こえてくる。
そして再度机の上に置かれたカードは...星。見事的中。クラスメイト達から歓声が一気に沸き起こった。
「すげえぞ海藤、透視成功だな!」
「フ、フンッ、このくらい当然だ...」
そっぽを向いた彼の掌にはびっしょりと汗が滲んでいたのを私は見過ごさなかった。つまりは、これは透視ではなく偶然によるもの。
それでも当ててしまう引きの良さは賞賛に値する者だと私は思う。
ESPカードは残り4枚。
すべてを当てることはできるのか。
To be continued...